【京都の旅】息をのむほどの美しさ!京都・宇治の藤めぐり
初夏、風に吹かれると揺れ、小さな花が外向きにたわわに連なる姿が可憐な藤。「砂ずりの藤」といわれる藤棚が有名な京都・平等院で癒しのひとときを。 【写真】大人の至福のとき「極上ホテル&旅館」
『源氏物語』の香りを感じる「京都・宇治の藤めぐり」
■心安らかな時を求め 宇治に過ごした平安貴族たち 琵琶湖を源とし、深い山の狭間を流れる宇治川。その変化に富んだ景色に魅了された平安貴族たちにとって、宇治は都の喧騒を逃れる山荘を構える地。 かつて紫式部も訪れ、『源氏物語』の「宇治十帖」の舞台に選んだ宇治。平安の麗しい公達(きんだち)の薫君(かおるのきみ)と匂宮(におうみや)が、愛しい姉妹や可憐な浮舟のいる宇治へ通う姿とその悲恋の結末が、今もこの地をいっそう風雅な地にしているよう。 現在、その地の中心である平等院は、紫式部に深くかかわった関白・藤原道長の山荘を、のちに息子・頼通が寺院に改建したもの。創建当時、都では疫病や災害が続き、人々は不安な時を過ごした。それを救っていたのが阿弥陀仏を崇敬する「浄土信仰」で、「平等院」は、まさに地上に極楽浄土を具現した世界。頼通は、ここで自らの心の平安を得るとともに、人々の平穏な暮らしを祈願したとも。浄土があるとされる西を背に鎮座する金色に輝く『阿弥陀如来坐像』。夕方、西を染める赤い陽光を背景に見る鳳凰堂の姿は、思わず手を合わせずにはいられない景色だ。 また新緑が山を包み、薄紫の藤が咲く季節、宇治はいっそう艶(あで)やかに。川沿いの散策はすがすがしく、しばし歩みを止め、木々が映る川面を眺めるひと時を。町には宇治茶を楽しめる店も多く、さらにこの地を古くから守護する宇治上神社などの史跡をめぐる散策路を歩けば、宇治の魅力をさらに実感。平安貴族たちが、心の平安を求め訪れた地は、今も変わらず訪れる人を癒すはず。 Ⓒ平等院
鳳凰堂そばの藤は、樹齢280年といわれ、花房は地面に触れるほどの1m以上になるため「砂ずりの藤」の呼称も。極楽浄土から降り注ぐかのような花越しに望む優美な建物の姿は、まさに平安時代へタイムトリップしたよう。藤の花の見ごろ/4月中下旬~5月初旬。同時期ツツジも開花 ©平等院