[MOM4955]浦和ユースMF井上大輝(3年)_出場機会を渇望していたアグレッシブな「浦和の切り込み隊長」が2得点を呼び込む躍動で勝利の立役者に!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] [12.6 高円宮杯プレミアリーグプレーオフ1回戦 清水ユース 0-2 浦和ユース Balcom BMW広島総合グランド] 【写真】「えげつない爆美女」「初めて見た」「美人にも程がある」元日本代表GKの妻がピッチ登場 この人がひとたびドリブルを始めると、チームに縦へと突き進むためのスイッチが入る。果敢に、アグレッシブに、強気な選択肢を選び取ることを自分に課し、誰よりも先陣を切って相手陣内へと飛び込んでいく。 「自分の得意なドリブルは結構通用していますし、そこに関しては調子が上がってきているので、本当は自分のゴールが欲しかったですけど、2ゴールに関われたことと自分が相手にとって脅威になれたことは、成長してきた部分が出たのかなと思います」。 浦和レッズユース(関東3、埼玉)の右サイドで躍動する“切り込み隊長”。MF井上大輝(3年=浦和レッドダイヤモンズジュニアユース出身)の2得点を呼び込む積極性が、とにかく重要な勝利を力強く引き寄せた。 「最初は自分もボールが落ち着かなくて、結構周りを見られないシーンが多かったですし、チーム全体も急いでゴールに向かう気持ちが強くて、そこまで相手の脅威にはならなかった印象です」。井上は前半の展開をそう振り返る。プレミアへの昇格が懸かるプレーオフ1回戦。清水エスパルスユース(東海1、静岡)と対峙した一戦は、序盤からお互いに探り合うような時間が続く。 常に雰囲気はあった。「エスパルスは細かいところが上手いので、そこで焦れずに守って、カウンターで攻めることは考えていました」。丁寧な守備から攻撃に転じた時には、井上のドリブルが相手に脅威を突き付ける。明らかにこの日の身のこなしは、キレていた。 スコアレスで折り返した後半。14番の持ち味が遺憾なく発揮されたのは12分。右サイドでボールを受けると、細かく大胆なボールタッチで前へ、前へ。いったんはボールを奪われたものの、MF和田直哉(2年)がヘディングで落としたボールへ、誰よりも早く反応する。 「予測で中に入っていったら和田から良いパスが来て、中の選手は見えていたんですけど、自分で打ちたかったので打っちゃいました(笑)」。左足を振り抜いたシュートは相手GKに弾かれたものの、リバウンドを拾ったFW照内利和(3年)が豪快なシュートをゴールへ突き刺す。 「前の試合も消極的なプレーを選んでしまって、シュートを打てずに終わるシーンが多かったので、今日は『自分を変えよう』と思って打ってみました。良いところにトシ(照内)がいてくれたので、決めてくれてよかったです」。反省を生かしてトライしたフィニッシュが、貴重な先制点を引き寄せた。 15分。今度はピッチの中央で14番が違いを見せる。DF横山海斗(3年)からスローインを受けた井上は、寄せてきたマーカーをハンドオフで弾きながらドリブルで運び、すかさず左へはたくと、パスを受けたMF深田京吾(2年)の左足シュートがゴール右スミへ吸い込まれる。 「中央までドリブルで持っていって、あの場面も打とうかどうか迷ったんですけど、ドリブルが上手くて、スピードもある(深田)京吾がフリーでいたので出しました。あまり良いパスではなかったですけど、京吾が個人技で何とかしてくれて、アシストが付いたので良かったと思います」。柔軟な判断の変更から繰り出したラストパスが、重要な2点目に直結した。 チームはそのまま2-0で勝利。「ウイングのところは仕掛けられる、最後の仕事ができるというところがどこに行っても求められるので、こういうタイミングで結果を残してくれるというのは、良い個がウチにもいるなと思いました」と平川忠亮監督も評価を口にした井上の躍動が、このシビアなステージで眩い輝きを放った。 最高学年になった2024年。勝負の年と位置付けてシーズンに入ったものの、肉離れによる長期離脱を強いられた期間もあり、コンスタントにスタメンで出場する機会は決して多くなかったが、その中で井上は様々な学びを得てきたという。 「外から試合を見る機会に、チームの状況も客観的に1回振り返ってみることができましたし、そこで自分が入ったらどう生きようかということも考えられて、そこから夏のクラブユースでも良い活躍はできたので、ケガはしましたけど、それも良い時間になったと思います」。 ただ、もちろん試合に出たい気持ちが強くないはずがない。プリンスリーグ関東でもスタメン出場は4試合のみ。「チームが勝ってはいたんですけど、『自分が出ていればな……』という試合もありました」と率直な想いも明かしつつ、「でも、その悔しさが逆にバネとなって、今こうやって試合に出られていると思いますし、それも自分の成長に繋がったかなと思います」と言葉を続けるあたりに、ポジティブなメンタルも垣間見える。 周囲も井上の実力はしっかりと認めている。「彼はそんなことは知らないでしょうけど、ようやく使おうかなと思ったらケガしたタイミングが重なったりして、ずっと『なんで使われないんだ』という試合に出られない悔しさもあったと思います。もちろんポテンシャルは非常に高い選手ですし、彼の武器を生かして後半戦はよく頑張ってくれていますね」(平川監督)「あまり試合に出られていない時期もありましたけど、彼の武器のドリブルを出せば、それが通用するのはみんなわかっていますし、お互いに信頼はしているので、今日のプレーも良かったと思います」(照内)。この最終盤のタイミングで、その存在感は間違いなく高まっている。 泣いても、笑っても、次の試合がこのチームで戦う最後の一戦。もちろん井上も試合後にみんなで喜ぶ光景しか、思い浮かべていない。 「京都サンガもこれまでやってきたことを出せれば勝てない相手ではないと思いますし、自分たちが全力を出せれば圧倒できると思うので、もう次は最後の試合ですし、個人個人が100パーセントを出して、自分がゴールを決めて、勝ちます」。 ジュニアユースからこのエンブレムを背負ってきた6年間のラストゲーム。浦和ユースの右サイドを疾走するレフティドリブラー。井上大輝のアグレッシブな突破力が、プレミア復帰だけをターゲットに掲げたチームが突き進むいばらの道を、逞しく、颯爽と切り拓く。 (取材・文 土屋雅史)
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