TIS、モダナイゼーション事業で「中長期的に1000億円以上の事業規模を目指す」
TIS株式会社は3日、モダナイゼーション事業に関する説明会を開催した。同社では、モダナイゼーション事業を2024~2026年の中期経営計画にて産業IT・金融ITの成長ドライバーのひとつとして位置づけている。 【画像】TISのモダナイゼーション事業について モダナイゼーション事業の市場動向について、TIS 常務執行役員 産業公共事業本部長の陀安哲氏は、「レガシー資産が企業や社会にとって大きなリスクとなっており、その傾向はますます強まっている」と話す。 それは、大手メーカーがレガシー資産の保守サポートを終了する見通しであることや、レガシーシステムを扱うことのできるIT技術者が不足していること、そして、レガシーシステムによって最新技術が導入できず、事業成長を阻害する要因にもなっていることなどが要因だ。 こうしたことから陀安氏は、「モダナイゼーションは社会、企業の停滞リスクの回避と将来の事業成長や変革に向け、必要な投資だ」と主張。そのうえでTISでは、同事業で3か年の累計売上高200億円を目指すほか、今後5年で年率20%を超える成長を続け、中長期的には1000億円以上の事業規模を目指すとした。 目標の達成に向けては、「当社独自のマイグレーションツール『Xenlon~神龍』を活用した提案を行う。また、Xenlonを中心としたプロジェクトの確実な推進と、その先のDXに向けた中長期的な提案とコミットメントを顧客に提示する。そして、大規模プロジェクトの推進における豊富な実績とナレッジを活かし、確実なフィジビリティを確保する」(陀安氏)としている。 Xenlonは、TISのモダナイゼーション事業の中核となる重要なツールだ。2014年に登場して以来、10社を超えるさまざまな業界や業種で採用され、基幹システムのモダナイゼーションをサポートしてきた。この事業をさらに強化すべく、金融ITと産業ITの領域それぞれで専門組織を設置したほか、サービスと機能も拡張しているという。 「TISのモダナイゼーションは2つのステップで実現する。技術的負債の解消と、システムの最適化だ」と、TIS テクノロジー&イノベーション本部 シニアエグゼクティブフェローの熊谷宏樹氏は語る。具体的には、COBOLなどのレガシー言語をJavaに移行し、DX実践のためのベースを作るわけだが、その中核を担うのがリライトツールの「Xenlon Migrator」だ。Xenlon Migratorは、顧客の資産変換条件を整備する分析ツールと、レガシー言語のソースコードからJavaソースコードを生成する変換ツール、そして実行時ライブラリによって構成されている。 レガシーシステムのモダナイゼーションには、システムを再構築するリビルドと、言語を刷新するリライトの2つの方法があるが、「リライトはリビルドに比べてコストと工期を削減でき、品質も高く保つことができる。システムの大部分を改善する場合はリビルドが適しているが、現行システムをそのまま新しいシステムに移行する場合はリライトが効果的だ」と熊谷氏は説明する。 熊谷氏は、Xenlonの強みについて、「既存のツールはJava変換後の保守性に欠けていた。変換によってコード行数が増加し、保守の生産性低下につながっていたのだ。また、言語変換のみを行うツールベンダーでは、テストや検証はユーザー任せ。SIerとしてプロジェクトに責任を持つため開発したXenlonは、ワンストップでサービスを提供し、保守性と性能の担保を重視している」と語る。 続けて熊谷氏は、「Xenlonの変換率はほぼ100%。変換率が低いと、変換後のソースを全部テストする必要があるため、変換率の高さは重要だ。また、メインフレームの動作を忠実に再現した実行ライブラリで正確性を保ち、プログラムの自動キャッシュなどによって性能も高い。さらに、保守性を考慮したプログラムコードを提供するなど、リライトプロジェクトの肝となる要素をすべて押さえている」とアピールする。 今後Xenlonは、対応する処理方式をより充実させ、テストフェーズをさらに効率化するなど、「新しい付加価値としてアジリティを兼ね備えた強みに成長させるべく、R&Dや人材投資を進める」(熊谷氏)としている。 ■ さらなるビジネスの拡大に向けて TISがモダナイゼーション事業を産業ITと金融ITの成長ドライバーとする中、さらなるビジネスの拡大に向けた動きも進んでいる。まず産業ITについては、11月26日にJFEスチール株式会社との協業を発表、顧客の業務領域に踏み込んだ支援を実現するという。 金融ITに関しては、2024年に専門組織を設置した。多岐にわたるニーズに対応するためモダナイゼーションメニューを拡大し、以前から対応している「アセンブラお助けサービス」に加え、米PegasystemsのBPMソリューション「Pega Infinity」を活用したモダナイゼーションができるよう、近日中にパートナーシップ契約を締結するという。 TIS 常務執行役員 金融事業本部長の下山豪彦氏は、「モダナイゼーション領域は事業の基幹システムとなることが多く、プロジェクトも複数年にわたるため、顧客との信頼関係が築かれる。そのため取引はモダナイゼーションだけでなく、カットオーバー後の基幹システムの保守や運用、さらにはDX化の支援を提案する機会も得ることになる。それが中長期にわたるストックビジネスの獲得にもつながる」としている。
クラウド Watch,藤本 京子