履歴書手書き論争、実際のところPC作成とどちらが有利なの? 大学ジャーナリスト・石渡嶺司
堀江さんは、手書き履歴書について、過去にも否定的なコメントを出しています。その中では、「気持ちは内容に込められているとおもいます」としています。 この点には、同意する採用担当者もいました。「手書きだから次の選考に通る、落ちる、ということにこだわること自体が間違いです。書いている内容が一緒に働けそう、というものであれば、面接に呼ぼう、という話になります。空欄が多すぎるとか、書いている内容が支離滅裂であれば、落としていきますし」 匿名ブログでは、「経営者からすればそういう人間が欲しいのかもしれないけど、俺は一社員に過ぎないからそういう奴と一緒に働くのはお断りさせていただきたい。という訳で上の目に届く前に下の方で『コイツ面接良くなかったですよ』と評価しておくのである」とあります。しかし、この点も柳本さんは、面接の評価が社員1人で左右されるはずがない、と疑問を呈します。「中小企業も含めて、面接の評価は1人ではなく、2人以上で担当します。そこでの評価がA評価と手書き履歴書を理由としてのD評価に分かれたとしましょう。その場合、必ず、なぜ評価が分かれるのか、すり合わせをします。そこで、手書き履歴書以外に大きな理由がなければ、落ちる、なんてことはまずなく、次の選考に進みます」 履歴書やエントリーシートなど選考書類は、1990年代以降、手書きかPC作成かの論争が続いています。一方、履歴書・エントリーシートは手書き・PC作成とは無関係に、項目によっては、薄い内容のものになる、と考える企業も増えています。 特にエントリーシートでは定番の志望動機、自己PRの内容の薄さを敬遠するため、エントリーシートを廃止して履歴書のみにする企業も増えています。就活ナビ最大手のリクナビを運営するリクルートキャリアは、2013年11月(2015年卒向けページ)から各社共通で利用可能なOpenES(オープンエントリーシート)を導入しました。学生の省力化が目的であり、PC作成で各社オリジナルの設問(最大3問まで)以外は、各社共通であり、一度入力すれば使い回すことができます。企業側からも「共通化できる項目は共通化すれば学生も企業も手間が省けていいのではないか」と一定の評価があります。2015年3月10日現在では、リクナビ掲載社数の4割弱となる5258社が導入しています。 さらに合理化を進めたのが、三幸製菓(新潟本社)で、2016年卒採用から、「日本一短いエントリーシート」を導入しました。採用サイト上で2つの質問(「おせんべいが好き?」「ニイガタで働ける?」)に回答後、エントリーシートの入力に移りますが、入力するのは、メールアドレスのみ。ほかは一切ありません。「ESで必要なものだけを残したら連絡先だけだった、ということです」と杉浦二郎・人事課長は話します。 こうした企業が増えれば、手書き論争は終結するかもしれません。 ---------------- 石渡嶺司(いしわたり・れいじ) 大学ジャーナリスト。大学、就活などを10年以上にわたり取材。著書に『就活のコノヤロー』(光文社新書)、『時間と学費をムダにしない大学選び2015』(共著、中央公論新社)など。