打首獄門同好会らしさ満載のメッセージ・ソング『BUN BUN SUIBUN』
読んで字の如くとはまさにこのこと
どこかで買い物するたびにレジでポイントカードを持っているかを聞かれる世の中である。とはいえ、ポイントカードを作ったものの、使い方がよく分からずに、貯(た)まったポイントを失効してしまった経験は、誰しもあると思う。 ふと、セゾンカードの「永久不滅ポイント」という言葉はすごいなと思った。読んで字の如(ごと)くとはまさにこのことで、カードを作ろうとしているすべての人にとって気になる“ポイントの失効”について、これほど簡潔に特性を言い表している言葉はない気がする。 永久不滅と言われると、読売ジャイアンツの長嶋茂雄さんが現役引退の時に言った「我が巨人軍は永久に不滅です!」の名言が頭をちらつくけれど、西武百貨店が頭をちらつくセゾングループのクレジットカードが、「永久不滅ポイント」とうたっているのもなんだか不思議な感じがして、インパクトが増して聞こえているのかもしれない。
<Mini Column>なんでこうなるんだよ!
先日、小学2年生の我が家の野球少年がリビングで勢いよくプラスチックバットを振って、テレビの画面を割った。十の字に映らない部分が出来てしまった画面を見つめて皆が言葉を失っている中、割った本人は崩れ落ちて大泣きしている。「もうやだ! なんでこうなるんだよ! ばかばかばか! おれが悪いんだ! 怒ってよ! なんか言ってよ! もっと怒られないとおれは分かんないんだよ!」叫びながら家の中を隅から隅まで所在なく歩き回り、立ち止まったかと思うと、床の上でのたうち回っている。 彼がそれほどまでに取り乱しているのには訳があって、そのテレビはつい数日前に買い替えたばかりの新品なのである。2週間前、ごきげんで野球ゲームをしていた前述の野球少年は、一人で盛り上がって手からコントローラーを滑らせ、テレビにぶつけ、画面を十の字にしたばかりだったのである。まさか1週間で2回もテレビを買い替えるはめになるなんて……。 全部のお年玉が入った財布を持って来て、「おれが悪いんだよ! これ使っていいよ! もう!」と、歯を食いしばって差し出した。その悔しそうな表情を見て、かわいいなあと思って、笑いそうになったけど、それではいけないと神妙な面持ちで受け取ったあと「分かった」と言って抱きしめた。 こんな金額じゃあ全然足りないけど、大丈夫だ。今年は定額減税というのが行われるらしいよ。一瞬で我が家にはあってないようなものになってしまったけれどな。 ■著者プロフィール いしわたり淳治 作詞家・音楽プロデューサー 1997年にロックバンドSUPERCARのメンバーとしてデビューし、オリジナルアルバム7枚、シングル15枚を発表。そのすべての作詞を担当する。2005年のバンド解散後は、作詞家として、Superfly『愛をこめて花束を』、Little Glee Monster『世界はあなたに笑いかけている』、King&Prince『ツキヨミ』他、SMAP、関ジャニ∞、Hey!Say!JUMP、DISH//、矢沢永吉、石川さゆり、TOMMORROW X TOGETHER、EXO、NCT127、JUJU、中島美嘉、上白石萌音、まふまふなど、音楽プロデューサーとして、チャットモンチー、9mm Parabellum bullet、flumpool、ねごと、NICO Touches the Walls、GLIM SPANKY、BURNOUT SYNDROMESなど、ジャンルを問わず数多くのアーティストを手掛ける。現在までに700曲以上の楽曲制作に携わり、数々の映画、ドラマ、アニメの主題歌も制作している。2017年には映画『SING/シング』、2022年には『SING2』の日本語歌詞監修を行い、国内外から高い評価を得る。音楽活動のかたわら、映画・音楽雑誌等での執筆活動も行っている。 著書の短編小説集『うれしい悲鳴をあげてくれ』(筑摩書房)は20万部を刊行、ほかに「次の突き当りをまっすぐ」(筑摩書房)がある。本連載『いしわたり淳治のWORD HUNT』に掲載されたコラムをまとめた書籍『言葉にできない想いは本当にあるのか』(筑摩書房)を発売中。2021年からは新ユニットである「THE BLACKBAND」を結成し、そのメンバーとしても活動中。
朝日新聞社