スタバを凌駕、中国ラッキンコーヒーが驚きの復活-ADR約12倍に
(ブルームバーグ): 中国のコーヒーチェーン、瑞幸咖啡(ラッキンコーヒー)の不正会計問題が2020年に発覚したことで、米スターバックスの対抗馬として注目された同社も終わりだと多くの人が考えた。
現在、ラッキンは生き残っただけでなく、驚異的な復活を遂げている。低価格のラテに引き寄せられる顧客が増え、昨年にはスターバックスを抑えて国内の業界トップとなった。
かつてはシアトルに本社を置くスターバックスを、安っぽく模倣しただけだと揶揄(やゆ)されたが、今では他の中国チェーンから手本にされ、スターバックスでさえ戦略の一部を参考にしているようだ。
ラッキンの回復から、デフレと不動産危機に苦しむ中国経済にもまだ成長余地があることがうかがえる。また、世界2位の消費市場で、過去の高度成長期よりも複雑化・現地化が進んだ中国市場において、世界的な大企業は慎重を期さなければたちまち劣勢に立たされるという教訓も読み取れる。
ラッキンの元シニアバイスプレジデント、臧中堂氏は、スキャンダルで疑問視された同社成長の正当性を立証できると考えている。
不正行為には関与していなかったものの、20年に退社した同氏は「ほとんどの人が同社は終わりだと考えていた。データを捏造(ねつぞう)したことは明らかに間違っており、違法行為だ。しかし、ビジネスモデルとなった設計の素晴らしさは認めざるを得ない」と語った。
ビジネスモデルの中心は、労力を省くための自動化とデジタル化で、それによりコストを削減し、提供までの時間を短縮できる。
現在は電気自動車(EV)向け充電サービスを手がける中国のNaaSテクノロジー(能鏈智電)に勤める臧氏(46)は、こうしたハイテクを駆使した効率化が引き続きラッキンの急成長とスターバックスを凌駕(りょうが)する躍進の原動力となっていると指摘した。
コロナ期に躍進
ラッキンがキャッシュレスでテイクアウトできるレジカウンターに力を注いだのはもともとコスト削減が目的だったが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期に効果を発揮。厳しいロックダウン(都市封鎖)措置で対面でのやりとりが制限されたためだ。