森永卓郎流・仕事で幸せになる方法 「資本の下僕になるのではなく、一人ひとりがクリエイティビティを発揮し、仕事をアートに」
突如、ステージ4のがん宣告を受け、人生の岐路に立たされた経済アナリストの森永卓郎氏が綴った渾身の「死に支度」ドキュメント『身辺整理 ─ 死ぬまでにやること』。 その中から、モリタク流「仕事で幸せになる方法」をテーマにピックアップ。仕事をアートにすることで、誰もが幸せに生きられるという哲学と、それを実現するための「モリタクイズム」とは。 一生続けられる仕事の見つけ方と、仕事における「終活」の意味を探ります。 ※本稿は『身辺整理 ─ 死ぬまでにやること』(興陽館)の一部を再編集したものです。
【森永卓郎(もりなが・たくろう)】 経済アナリスト 1957年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。 経済企画庁総合計画局、三井情報開発(株)総合研究所、(株)UFJ総合研究所を経て、獨協大学経済学部教授。専門は労働経済学と計量経済学。堅苦しい経済学をわかりやすい語り口で説くことに定評があり、執筆活動のほかにテレビ・ラジオでも活躍中。 2023年12月、ステージ4のがん告知を受ける。
会社にいるのはバカな上司ばかり
それにしても銀行出身の上司には悩まされた。 これは彼らが銀行という組織の中で叩きこまれてきた悪しき習慣に由来する。 銀行では権力者が絶対なのだ。 部長の言うことは絶対、本部長の言うことはどんなに理不尽であっても絶対に服従しなくてはいけないという風潮が脈々と受け継がれている。 当時、銀行では部下は上司のたばこの銘柄を把握していて、会議中には上司のたばこの残り本数を数えていた。 上司が最後の一本に火をつけるや否や、自腹で買ってきたたばこのパッケージを開け、箱から一本たばこを引き抜いて「どうぞ」と差し出すための準備を始めるのだ。 こういうわけのわからない慣習を重ねながら出世してきた人間は、部下に理不尽なことを強いるのは当たり前だと思っているのだが、銀行に勤めたことのない私のような人間にとっては、とてつもなく陳腐で、納得がいかないことだった。