森永卓郎流・仕事で幸せになる方法 「資本の下僕になるのではなく、一人ひとりがクリエイティビティを発揮し、仕事をアートに」
仕事で幸せになる方法
現在、私の名刺の肩書は「獨協大学経済学部教授」だ。
ここに至るまでの流れは少々複雑なのだが、2005年に三菱UFJリサーチ&コンサルティングを辞めた。 メディアからの取材を受けるたびに稟議書を回せと会社に求められたのだが、当時は取材が1日10本ペースだったので、稟議書を回す時間などなかった。 ただその後も客員研究員として無給で会社に07年まで残り、04年から並行して獨協大学経済学部の特任教授に就任し、06年からは正式に経済学部教授になった。 獨協大学で私が学生に教えているのは、「アーティストになろう」ということだ。資本の下僕になるのではなく、一人ひとりがクリエイティビティを発揮しながらアートをつくる。 仕事もアートにする。 そうすれば、みんな幸せに生きられる。 しかし当初は、どうしたらそれが実現できるのか、モリタクイズムをどう叩き込んだらよいのかがわからなかった。 解決の糸口は、すこぶる優秀なゼミの女子学生が一向に内定が取れないという問題に直面したことだった。
大学の成績では、ベストテンに入るほどの彼女が内定が取れない一方で、チャラチャラしていた同級のゼミ生から大手企業の内定を受けたという報告が相次いでいたので、この違いはどこにあるのだろうかと女子学生に面談を持ち掛けた。 なぞはすぐに解けた。彼女は、俯き加減で声も小さく、こちらの質問に対する反応も鈍い。これじゃあ内定は決まらないはずだと思った。 聞けば、緊張すると頭が真っ白になってしまうタイプなのだという。それを受けて私は森永ゼミですべきことは経済論を説くことではない、プレゼンテーション能力を高めることなのだと悟った。 そもそもアカデミズムの世界に進もうという学生はいないのだから、小難しい経済の話をしても無意味なのだ。 それより自分を表現する技術を身に着けることが大切なのだということで、ゼミでの指導を抜本的に変えた。 ゼミのなかで川柳を作ったり、一発芸をしたり、漫才をしたり、モノボケをしたり、いわば吉本興業のNSCのようなことをしている。