職歴も学歴もない?「アイドル」を辞めた子はどうするのか 元アイドルが解説する“就活事情”
配信で稼げなくなった時にどうするか
ツギステは、SNSや口コミを頼りに利用する方が多いそう。 「あとは『アイドル』『就職』という単語を検索してたどり着いたという方がいらっしゃいました。実際に利用された元アイドルさんが、在籍していたグループのメンバーを紹介してくれたこともあり、信頼されていると感じます。私たちが元アイドルなので、どのようなことを頑張ってきて、どんな辛いことがあったか理解ができる。アイドル時代の頑張りを、どう強みとして企業にアピールするか、経験としてわかるのが強みです」(桜さん) ツギステの事業の背景には、橋本さんの“多様性”への思いもあるようだ。 「自分が政治家になりたいと思ったきっかけは、仮面女子時代、メンバーが事故にあったからでした(2018年、猪狩ともかが看板の下敷きになり脊髄を損傷。車いす生活となった)。彼女が障害を抱えながらアイドルを続ける道を選んだ時に、バリアフリーに関心を抱き、誰でも選択肢のある社会を作りたいと考えたのです」(橋本さん) それは、元アイドルのキャリア選択にも通じるものがある。 「今はライブ配信などで生計を立てられる時代ですから、アイドルを辞めてすぐに就職しなくても、しばらくは生活できると考える元アイドルも多いと思うかもしれません。でも、配信で稼げなくなった時にどうするか。そうなってもキャリアを築けるようなお手伝いをしたいと考えています。もちろん、ファンを思って配信を続けながらのパラレルキャリアで働くことだってできます。つまり、自分らしい働き方を選べるようになってほしいのです。政治の世界に入って、若者の貧困や所得が上がらない問題、日本全国の人手不足という課題に向き合っています。いわばアイドルのセカンドキャリア問題はその縮図。この視点をもちながら事業推進することは、私のバックボーンを活かせる部分かなと思いますね」(橋本さん)
「あんよを大事に」「保健室」
元アイドルの方が次のキャリアを歩むために大事なこととは何か。橋本さんからは意外な言葉が――。 「“元気に挨拶ができること”ですね。ビジネススキルはあとから身に着けることができますが、その場の空気を明るくさせるような挨拶ができる人って、なかなかいない。今は色々なタイプのアイドルがいますが、元気に挨拶ができる子は、辞めた後もやっぱり活躍できているように感じますね。それと、やはりアイドル活動に全力で取り組んだ経験でしょう。お客さんとお話することや、ライブパフォーマンスを磨くこと、SNSで発信するのも全力で取り組む。こうした経験がこの人生で無駄になることは、全くないと思います」 今後は、アイドルに限らず「ユニークな経験をされた方にも機会を広げていきたい」と桜さん。最後にお2人に、ツギステが目指していることを聞いた。 「ツギステには『あんよを大事に』という言葉を掲げています。安心と寄り添いの二つを大事にする、という意味です。どんな時でも、誰もが安心していただけるように寄り添える存在の企業になりたいと感じています。なんでも気軽に話してもらえるような環境づくりを大切にしていきたいと思っています」(桜さん) 「アイドルの方にとって『保健室』みたいな会社になりたいと思っています。現役時代から、とにかく心と体の健康に気をつけていておいてほしい。心身を壊しての卒業となると、就職活動は大変です。新しい環境に慣れるのには、弱っている状態だと難しいですから。健康に気をつけてはじめて、次のキャリアに繋がる機会もあります。でも、そんな弱った人であっても支えられる、何でも相談に乗れる場所でありたいと思っています」(橋本さん)
池守りぜね(いけもり・りぜね) 東京都生まれ。フリーライター。大学卒業後、インプレスに入社。ネットメディアで記者を務めた。その後、出版社勤務を経て独立。育児、グルメ、エンタメに関する記事のほか、インタビューも多数執筆。『一瞬と永遠』、『絶叫2』など、映像脚本も手掛ける。プライベートでは女児のママ。 デイリー新潮編集部
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