設置作業が行われた選挙ポスターの掲示板（９日、東京都世田谷区で）

　太字のゴシック体で書かれた名前に、歯を見せながら笑顔を向けるスーツの人。選挙になると、街のあちこちに設置される掲示板にそんなポスターが並ぶ。党が違うのに、どれも似たように見えるのは気のせいだろうか。この夏の東京都知事選でも話題になった選挙ポスターについて調べてみると、政党や各立候補者の戦略が見えてきた。（デジタル編集部　瀬戸聡仁） 【図】予想される各党の獲得議席…読売世論調査

選挙ポスターとは？

　公職選挙法によると、選挙期間中のポスターは、通常の政治活動で使われるポスターとは区別されている。

　各自治体の選挙管理委員会が設置する掲示板には、掲示板ごとに候補者１人につき１枚しか貼れない。選挙運動用のポスターの大きさは４２センチ×３０センチ以内、掲示責任者と印刷者の名前・住所を記載しなければならない決まりはあるが、どんな内容やデザインにするかの規定は特にない。

山形市内に設置されたポスターの掲示板（１０月１０日撮影）

　また、衆議院選挙の小選挙区などの立候補者は「個人演説会告知用ポスター」として４２センチ×１０センチまでのポスターを掲示板に貼ることもできる。つまり、選挙運動用のポスターと合わせれば、４２センチ×４０センチまでの大きさのものを貼れることになり、実際に多くの候補者はこの方式だ。ポスターをよく見ると、演説会日程欄が隅っこにあるものが多いはずだ。

　この掲示板に貼るポスターについては、規定の票数を得た場合には公費で負担されることになっている。

なぜ同じようなポスターに？

日本大学法学部の安野修右さん

　掲載内容の規定がなければ、候補者ごとにもっと特色のあるデザインになってもよいはず。しかし、文字の大きさや色、位置は違えど、どうにも同じように見える。その理由を、選挙制度を研究している日本大学法学部専任講師の安野修右さんに聞いてみた。

　安野さんによると、歯を見せた笑顔の写真をポスターにすると、得票が伸びるというデータがあるそうだ。

　笑顔のバストアップ写真に、投票用紙に書いてほしい自分の名前を目立つように配置すると、どうしても同じようなデザインに見えてしまうというわけだ。