どれも同じように見える立候補者の選挙ポスター、実は理由があった
ただ、安野さんによると、「選挙区をまたいで掲示板を比較すると、政党ごとに統一感の有る無しが違う」という。自民党には統一感が薄く、立憲民主党も色合いはそろっているが、候補者ごとの個性がある。日本維新の会や共産党、れいわ新選組などは統一感があるという。その違いを安野さんは「比例選での得票を狙っていると考えられます」と話す。色味は政党カラーに統一し、政党名や政党のキャッチコピーを前面に押し出すことで、政党の知名度向上も図る目的があるのだという。
安野さんは、「ポスターに記載されている印刷所に注目しても興味深い」。対立候補が同じ印刷所を使っていたり、毎回同じ印刷所を使っている候補者がいたりするなど、様々なことが見えてくるという。同じ印刷所にデザインも依頼していれば、対立候補でもポスターデザインが似る可能性もある。ウェブメディア「スローニュース」が作成した「選挙運動費用データベース」で候補者ごとの選挙運動費用収支報告書を比較しても、どの候補者がどの印刷所を利用したかが分かる。
変わるポスターのルール
この夏の東京都知事選では、掲示板のポスターが議論を呼んだ。政治団体「NHKから国民を守る党」とその関連団体が24人を擁立し、同党に寄付した人がその枠に自作のポスターを貼ることを認めた。その結果、営利目的の広告や卑わいなポスターが掲示され、「品位を欠いている」「税金が使われたと思うと腹立たしい」などと批判が巻き起こった。
問題を受け、国会も議論を始めている。9月には公職選挙法改正に向け、与野党の実務者協議が開かれ〈1〉ポスターの品位保持規定の新設、〈2〉営利目的の掲示に罰則を設ける〈3〉候補者の名前の掲載を義務付ける規定の新設、で合意した。
また、鳥取県は10月、選挙運動の目的以外に掲示板を利用することを禁止する条例を制定した。具体的には、「候補者と無関係な第三者による掲示」や「同一の掲示板に同じポスターを複数掲示」することを違反と明記した。罰則はないが、違反を確認した場合は選管が撤去命令を出すなどの対応をする。17日に施行され、今回の衆院選も適用対象となっている。
選挙期間中でもまじまじと見る機会が少ない選挙ポスターだが、よく見ると、何か発見があるかもしれない。投票日は10月27日。しっかりと候補者を見極め、投票所に足を運んでほしい。