「あれ、おかしいな…体が動かない」箱根駅伝“山の神”に抜かれたランナーの悲劇…東洋大・期待の1年生がまさかの大失速、なぜ起きた?
「いつもどおりに走れば大丈夫」
そのときの東洋大学の目標は、「往路で5位内を死守」だった。 その戦略として1区から4区まで、なんとか3位前後の上位を守り、5区の釜石に走りやすい順位で襷を渡す。そこまでが全体の共有意識としてあり、あとは釜石が粘って5位内に入ればOKというシナリオだった。 果たして1区から4区までは奮闘し、狙いどおりの展開になった。小田原中継所で釜石は2位、トップの東海大学とは2分差というポジションで山を上ることになった。 スタート前、川嶋監督からは、「いつもどおりに走れば大丈夫」と言われた。気持ちは落ち着いていたが、ユニフォームについては、佐藤コーチとどうすべきか最後まで悩んでいた。釜石は汗の量が多かった。Tシャツだと最初に汗をかくと濡れて重くなり、上りの際に影響が出てくる。最終的にランシャツ(ランニングシャツ)にするのだが、その決断がのちに思いもしない結果を導くことになる。 スタートしてからは自分のリズムで気持ち良く走れた。沿道から声援が束になって耳を貫いた。「これが箱根か」と気持ちが高揚した。 大平台あたりで後ろがざわざわするようになった。 「今井さんが来たか」 釜石は、そう察した。 「順天堂大学との差はあまりよくわかっていなかったです。ただ、観衆の感じをみれば、今井さんが来て、みんなそっちに目線が向いているんだろうなって思いました」 今井が山上りとは思えないスピードで背中に迫ってきた。背後に人が来た気配を敏感に察したが、横を一瞬で走り抜けられた。 「今井さんには、1歩もつけなかったです。つかなかったんじゃなくて、つけなかった。もう次元が違いました」 その後、上ってきた北村には、「これ以上離されていけない」と思い、その背中についた。だが、200メートルほどで先を行かれてしまった。 「今井さんも北村さんも、多分、平地ならば多少はついて走れたと思うんです。一方、山はリズムを崩してしまうと、後半、苦しむことになる。でも、抜かれるとどうしても反応してしまうんですよ。今井さんはどうにもならなかったですけど、北村さんのときはついていこうとしてリズムを崩してしまったんです」
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