インテル、ナイキ、ディズニー…凋落した巨人たちが「復活」すると信じる理由
ディズニー
ハリウッドは今、「晴れの日のデトロイト」のような状況に陥りつつある。かつて主流だったテレビの通常放送(リニア視聴)は全視聴時間の50%を下回り、ストリーミングサービスが台頭している※4。国内の映画・テレビ制作は40%も減少した。これは、GMとクライスラーが破産申請する前年に両社の自動車販売台数がそれぞれ23%と30%減少したのと似た状況だ。 この現象の原因をAIだと主張するのは簡単で劇的だが、実際はそうではない。根本的な原因はより単純だ。コンテンツ制作予算は今年3%増加したものの、スタジオは同じ仕事をより安い人件費で行える人材を他の場所、特に海外で見つけられるようになった。例えば、ネットフリックスの年間150億ドルのコンテンツ予算の半分は現在、海外で使われている※5。 ただし、皮肉なことに、ロサンゼルスは素晴らしい気候のおかげで、デトロイトのような都市の荒廃は免れるだろう。 ディズニーは、インテルとは異なり、業界の「気候変動」、少なくともその雰囲気を理由に挙げることができる。この変化は顕著だ。 例えば、AMCは北米最大の映画館チェーンで1万以上のスクリーンを所有するにもかかわらず、今やエンターテインメント業界の巨人としてではなく、投機的な「ミーム株」として知られるようになった。この状況は、映画産業全体の変容を象徴している。 大手メディア企業の凋落も著しい。過去3年間で、パラマウント・グローバルの時価総額は430億ドルから75億ドルへと激減。ワーナー・ブラザース・ディスカバリーに至っては、わずか2年で企業価値の3分の2を失った。 一方で、新興勢力の台頭も目覚ましい。YouTubeは、自社でコンテンツ制作に投資せず、クリエイターと収益を分配するモデルで、テレビ視聴時間の10%を占めるまでに成長※6。ネットフリックスが7.6%で2位に続く。 しかし、従来のメディアを追い抜いたこれらのストリーミング事業者でさえ、新たな脅威に直面している。それが、1日2時間以上、ユーザーの興味を引き付け続ける「ドーパミン放出装置」とも言えるTikTokだ※7。その短尺で中毒性の高いコンテンツは、既存のあらゆるメディアに対する挑戦状となっている。 ハリウッドの激変の中で、かつては難攻不落と思われたディズニーの城も揺らいでいる。過去3年間で同社の株価収益率(PER)は283から36へと急落し、企業価値は半減した。ハリウッドを自動車産業になぞらえるなら、ディズニーはフォードに相当するだろう。 映画館での上映ビジネスは構造的な衰退に直面しているが、ディズニーはその中でも健闘している。わずか3本の映画(『デッドプール&ウルヴァリン』『インサイド・ヘッド2』『エイリアン:ロムルス』)で世界の興行収入の42%を占めたのだ※8。 ケーブルテレビ業界が斜陽化する中、ディズニーは豊富なコンテンツ資産(Hulu、ABC、FX、ESPN、マーベル・スタジオ、ルーカスフィルム、ピクサー、20世紀スタジオ、ナショナル・ジオグラフィックなど)を武器に、ストリーミングサービスを新たな「ケーブルバンドル」として確立しつつある。 しかし、ここにも課題がある。値上げ後でも、広告なしのディズニーのストリーミング・エコシステム全体へのアクセス料金は年間159.99ドルだ。これは中級のケーブルテレビパッケージの年間料金1,380ドルと比べると大幅に安い。この価格差は、ディズニーの収益性に大きな影響を与える可能性がある。 ディズニーの収益の36%を占める重要な柱であるテーマパーク事業も苦戦している。業界全体で集客が鈍化し、前四半期の営業利益は3%減少した※9。ディズニーとユニバーサル・スタジオ(コムキャスト所有)は、海外旅行との競争が原因だと主張した。 しかし、より深刻な問題は価格にあるかもしれない。4人家族のディズニーワールド3泊の休暇の最低価格が2,783ドルという高額であることだ。さらに衝撃的なのは、最近の調査で45%の親がディズニー旅行のために借金をしているという事実だ。 わたしの見解はこうだ。ディズニーパークは、サンタモニカのリアリティTV番組制作者と同様、提供する価値に比べてコストが高すぎる。つまり、コストパフォーマンスが悪いのだ。ディズニーもこの問題を認識しているようで、価値提案を改善するために600億ドルという巨額の投資を発表した※10。 ここでプロのアドバイス。『デッドプール』のアトラクションはどうだろうか?