実は「空中分解寸前だった」国民民主党、「103万円の壁」の「次」は何か?
保有議席の4倍にあたる28議席を獲得し、大躍進を遂げた国民民主党。21日には自民・公明の与党とともに、「年収103万円の壁」を見直すことで合意することに成功した。しかし、その躍進の裏では4つの支援労組のうち2つが離脱寸前の危機にあり、いつ空中分解してもおかしくない状況だった。他党からの吸収工作やメディアからの軽視を乗り越えた彼らは「103万円の壁」の次に何を目指すのか。国民民主の真の姿に迫る。 【詳細な図や写真】国民民主だったため、敗北を喫したこともあった(Photo/Shutterstock.com)
国民民主を支えてきた4つの民間労組
「私たちは本当にギリギリのところまで追い詰められていた。今回の衆院選で国民民主党は現有議席の4倍にあたる28議席を獲得し、大躍進したものの、この選挙までは、国民民主党を支援する4労組(4産別)のうち2つが離脱する瀬戸際で、いつ空中分解してもおかしくなかった」 そう振り返るのは、国民民主関係者だ。立憲民主党、日本維新の会に次ぐ野党第3党というポジションにありながら、存在感をなかなか発揮できず、支持率は長い間低迷していた。 国民民主は、4つの民間労組(産別)が支えてきた政党である。それらの組織は、参院比例での得票順に、電力、自動車、UAゼンセン、電機となっている。ちなみにUAゼンセンは、小売流通や繊維を中心にアルバイトやパートで構成された組織である。 参議院議員選挙の比例では、この4つの民間労組がそれぞれ候補者を立てていたが、2019年、2022年の参院比例選で獲得できたのは3議席のみであった。 いずれも電機系労組(電機連合)が擁立した候補者が落選している。しかも、電機が擁立した候補者である矢田稚子(やた・わかこ)氏が獲得した得票数は15万929票であったが、かつて同じ「民主党」であった立民(立憲民主党)の比例最下位当選者の得票は11万1703票であった。 つまり、矢田氏が立民から立候補していれば当選していた可能性が高く、国民民主ゆえに敗北を喫したということになる。
自民党に取り込まれそうになった経緯
こうした点に目をつけたのが、自民党の麻生太郎氏と茂木敏充氏であった。落選した矢田氏を岸田内閣の首相補佐官として取り込み、あわよくば国民民主そのものを自民に飲み込もうという算段があった。 「来夏の参院選が近づく中で、比例で最下位当選だったUAゼンセンが、参院選比例候補の公認申請をなかなか出そうとしなかった。国民民主内では、電機が立憲へと合流するのではないかと疑心暗鬼になっていた」(国民民主関係者) このように、国民民主は空中分解寸前まで追い込まれていたのである。国民民主の創立メンバーの1人である高沢一基区議会議員は、悔しさをにじませる。 「孤立・孤独対策の担当大臣の設置、コロナ給付金、ヤングケアラーの問題も国民民主の提案からスタートしていますが、政策が実現するときには自公が『私たちがやりました』と演出してしまう。 現在、大きな話題となっている103万円の壁だけでなく、トリガー条項、再エネ賦課金の廃止をずっと私たちが言い続けてきました。 今回の自公との協議がどう決着しようとも、いつか実現すると思います。それぐらい政策には自信を持っています。立憲や維新は、与党に対して『是々非々』という言葉をよく使うと思いますが、それでは与党が提示してきたものを判断するという姿勢であり、受け身でしかありません。 私たちは『政策協議』と言い続けてきました。こうした積極的な姿勢は、私たち国民民主の『源流』にもある私たちのDNAのようなものです」