「着られる服がない」障害者の悩みに応えた、ユニクロ元社員の挑戦 洋服お直しサービスが目指す未来「全ての人に平等な服の選択肢を」
福祉とおしゃれは、切り離されて考えられることも多い。だが、持病があったり、身体が不自由になったりしても、着たい服を楽しみたいという想いは誰しもの心にある。 【ビフォーアフター写真】スーツを、着物を…こんな感じで着やすく“お直し”します 株式会社コワードローブが運営するオンラインサービス「キヤスク」は、そんな当事者の気持ちに寄り添い、身体の不自由な人へ服のお直しを行う。 代表の前田哲平さんはユニクロで働く中で、ひとりの聴覚障害者と出会い、多くの重度身体障害者が直面している“服の悩み”を知り、キヤスクを立ち上げた。
身体障害者が抱える「服の悩み」を解決するために起業
ユニクロで働いていた前田さんは2018年の春、身体障害者の友人を多く持つ聴覚障害者と交流。そして、その方から重度の身体障害者が「着られる服がない」と困っていることを聞き、衝撃を受けた。 「あらゆる人に服を届けるというユニクロのコンセプトが自分にとって誇りだったので、まだ届けられていない人がいることに驚きました」 それまで目を向けたことがなかった世界の洋服事情を聞かされ、前田さんは最初、半信半疑だったそう。だからこそ、「知りたい、理解したい」と思い、実際に聴覚障害者の方の友人や障害者支援団体に話を聞き、現状を調査。 その結果、重度の身体障害を持つ人の中には、着たい服ではない洋服を我慢して着ている方や不自由を抱えながら洋服を選んでいる方が多くいることを知った。 当事者にとって「着やすい」と感じる洋服は、病気の症状によって様々。好きなデザインも人それぞれであることから、この問題は既製品を提供することでは解決しないと前田さんは痛感。 何かサービスを始めたほうがいいのではないか。そう考え、20年間勤めたユニクロを2020年の年末に辞め、起業準備。クラウドファンディングを行い、集まった寄付金と自身の貯金を活用して、2022年3月、「キヤスク」を立ち上げた。 当事者が求めるお直しは、生の声をもとに研究。知り合いの車椅子ユーザーの方に、着たいけれど諦めている服を実際に街のお直し屋さんへ持って行ってもらい、どんな不自由点があったのかをヒアリングしたこともある。 サービスを始めて約2年経った現在、キヤスクを利用した人の数はリピーターも含め、計300人にも及ぶ。 「3人に2人はリピートしてくださっていますね。毎月、お直しを依頼してくださるリピーターさんもいらっしゃいます。」