内省(リフレクション)とは?自身の成長とビジネスに生かせる「振り返り」の技術
【ケース別】認知の4点セットで内省をしてみよう
ここでは3つのケースで活用できる内省の事例をご紹介します。 ◆【モチベーションが上がらない】「動機の源」を探す内省 「今の仕事にモチベーションが上がらない」というときは、キーワードを使って、自分の「動機の源」=やりがいや喜びを感じる理由を言語化してみましょう。キーワードのリストはどのようなものでも構いません。 ●キーワードから自分の動機の源を探す キーワードリスト バランスの取れた生活/職業上の行い/チャレンジ/勇気・リスクテイク/職業上の成果/社会的問題/名声・成功/パワー・影響力/正直/自己理解/オープンさ/良い人間関係/勤勉さ/孤独/瞑想/他者支援…… 意見 | 【どのキーワードを選びましたか?】良い人間関係 経験 | 【このキーワードを大切だと感じた経験は、どのようなものでしたか?】仲間とプロジェクトを成功させたこと。メンバー全員が目標に向けて自分から動き、強みを発揮して、ワンチームとなって大きな成果を出せた。 感情 | 【どのような気持ちでしたか?】今までで一番うれしい! 価値観 | 【そこから見えてくる、あなたを突き動かす大切な価値観は何ですか?】共創する喜びと充実感 例えば、同じプロジェクトの成功経験でも、それを喜ぶ理由は「自分が成長できたから」「他のチームとの競争に勝てたから」など、1人ひとり異なります。あなたが大切にしている価値観を発見したら、中でも情熱に繋がるものを動機の源としてリスト化しておきましょう。 モチベーションが上がらないときはリストを見返して、動機の源を満たすための行動を指向すれば、また仕事に前向きになれるでしょう。 ◆【上司・部下と意見が合わない】対話のための内省 上司と部下の間で意見が噛み合わないというシーンはよくあります。しかし、多くの人が「対話」だと考えている場面では、互いの「意見」にしか意識を向けていないのではないでしょうか。実は、本当の対話は内省が前提になっているものです。 対話のポイントは、自分の考えを客観視する「自己内省」と、相手の「意見」だけでなく、「経験」「感情」「価値観」に焦点を当てる共感の聴き方です。 ここでも認知の4点セットを活用します。まず自分の内面を客観視した上で、一旦自分の考えを横に置き、評価や判断を保留にして相手の意見を聴きましょう。たとえ自分とは逆の意見だとしても、背景にはその人なりの経験・感情・大切にしている価値観があります。それに意識を向けることで、相手の言葉の聞こえ方も少し変わってくるはずです。 ◆【弱みを克服したい】「願い」の内省 誰でも自分の弱みに意識を向けると、ネガティブな気持ちになりがちですが、そんなときこそ、その背景にある「願い」を言葉にしてみましょう。ネガティブな感情は、自分の動機の源を知る最高のきっかけとなります。 ●「願い」の内省 意見 | 【願いは?】○○さんのように人前で話すことができるようになりたい 経験 | 【なぜそう思うのですか?】○○さんの話は難しいこともわかりやすく、面白いので人気がある。私はプレゼンを頼まれても、自分も楽しめないし、ぎこちない話し方で聴いている人にも申し訳ない。 感情 | (○○さんのお話)楽しい/(自分がスピーチを行うとき)気が重い、緊張、楽しくない、申し訳ない 価値観 | 自分も楽しみたいし、周囲にも楽しんでほしい 上は「スピーチが苦手」という感情を深掘りした結果、背景にあった「本当は楽しみたいし、楽しませたい」という価値観に気づいた例です。「苦手は克服しなければいけない」というよりも、「みんなが楽しいスピーチに挑戦したい」という思いに気づくことができれば、内発的な動機を自分で突き動かし、よりポジティブな気持ちで取り組むことができるでしょう。 日々の仕事や生活の中で何かに不満や辛い気持ちを持ったときは、その理由を自分に問いかけ、満たされていない動機の源が何なのかを特定してみるといいでしょう。そこに自分の願いと「ありたい姿」を見いだせるはずです。
【熊平美香(くまひら みか)氏 プロフィール】 一般社団法人熊平セキュリティ財団 21世紀学び研究所・代表理事 ハーバード大学経営大学院でMBA取得後、熊平製作所・取締役経営企画室長などを経て日本マクドナルド創業者に師事。独立し、リーダーシップや組織開発に関するコンサルティング活動を行う。2015年「21世紀学び研究所」を設立し、ニッポンの「学ぶ力」を育てる取り組みを開始。2018年に経済産業省が改定した社会人基礎力の中に、リフレクションを盛り込む提案を行う。著書に『リフレクション 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。
取材・文・編集:鈴木恵美子