生まれ変わったカルティエ、伝説の旗艦店へ。
Cartier
歴史と物語が詰まった老舗ジュエラーの本店を訪れて! インテリアの意匠、本店でしか見られない美術品レベルのアーカイブ、メゾンを愛し訪れたセレブリティや文化人の残り香など、甘美な世界を堪能できる。
黄鉄鉱のゴールドが脈打つ黒い大理石のファサードを構える、ラペ通り13番地のカルティエのパリ本店。2年以上かかった改修工事を終え、昨秋リニューアルオープンした。
王侯貴族、ハイソサエティ、ジェットセット、セレブリティ......1899年の開店以来、ジュエリーの歴史に名を残す人々を迎え続けている店内には新たに6フロアを貫くパティオが設けられ、ガラス天井から降り注ぐ光がダイヤモンドの白い輝きのように来店者を幻惑させている。
この歴史ある本店は、三代目でメゾンを国際的に発展させたルイ・カルティエ、ルイの傍らでメゾンの創作に関わり、彼の後継者として1933年から1970年までクリエイティブディレクターを務めたジャンヌ・トゥーサンの聖域と表現される場所だ。現在、かつての彼らの執務室はそれぞれの名を冠したサロンに改装されている。
2階の「ジャンヌ トゥーサン」サロンは、イエローゴールドと官能的曲線を愛した彼女の嗜好をリスペクトした空間。豊富な高級素材、大胆なカラーコンビネーション、しなやかさ、立体感などを特徴とする"トゥーサン テイスト"がその昔生まれた場所に、我々は身を置くことができるのだ。
カルティエ スタイルを打ち立てるために、早い時期にデザインスタジオを創設したルイ。そんな彼にとって生き方も装いもアンチ画一主義のジャンヌが持つファッションセンス、女性としての視点は頼るべきものだった。後に友人でクチュリエ、ユベール・ドゥ・ジバンシィが、"若返りと現代化によりハイジュエリーに革命を起こした"と彼女の類稀なる創造性を称えたように、彼女の創作は活気に満ち、前衛的でありながらエレガンスが備わっていた。
異国文化からインスパイアされた創作も彼女が得意とするものだったが、自然主義様式を復興させた彼女による生命力、躍動感があふれる動植物の優美なジュエリーは、まさに"トゥーサン テイスト"。若い頃から動物的性格と官能的な魅力ゆえにパンテール(豹)と呼ばれていた彼女ゆえか、とりわけ獰猛ながらも優美な豹をモチーフとして好み、デザイナーとともに彫刻的なシルエットを与えたのだ。