「借金王」から始まった!知的障害者と作るチョコレート革命の奇跡
芸人・大川総裁が、福祉の当たり前をひっくり返すプロたちに話を聞く。今回は知的障害者の一般雇用を可能にした久遠チョコレートの設立者・夏目浩次さんの挑戦を紹介する。夏目さんはチョコレートのことを「誰も排除しない食材」と表現。その理由とは。本稿は、大川 豊『大川総裁の福祉論!――知的障がい者と“食う寝るところ、住むところ”』(旬報社)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 周囲の猛反対を押し切って 消費者金融からの借金でスタート 大川 そもそも夏目さんは何がきっかけで久遠チョコレートを始めたのでしょうか。 夏目 最初はチョコレートではなくてパン屋さんでした。今から20年前、3人の知的障がいの方を一般雇用してパン屋さんを始めたのが原点です。最初の目標は最低賃金を上回る給料を出すことでした。 大川 それまでにパン作りの経験はあったのですか? 夏目 ありませんでした。福祉系の大学に行っていたわけでもありません。僕はもともと大学院で都市計画学をやっていて、駅のバリアフリー化に取り組んだときに、初めて障がいのある方と接点ができたんです。 そこから交流を重ねていく中で、障がいがあるというだけで働く選択肢がぐっと少なくなる現実を知りました。そもそも知的障がいの方には働く場所もありませんでした。日本はめちゃくちゃ豊かな経済大国なのに、それはおかしいじゃないかと思ったのが事業を始めたきっかけです。 大川 周囲から反対されなかったんですか? 夏目 当然ながら周囲は猛反対でした。ただ、パートナーは反対しないで受け入れてくれました。今まで一度も反対されたことはありません。
大川 それもすごいですね。自分は映画(編集部注/『チョコレートな人々』)を観て知ったのですが、パン屋さんを始める時にはカードローンで借金をしたそうですね。 夏目 はい。日本は30分ぐらい消費者金融の無人契約機に入ると300万円も借りられるんです。その点はいい国だと思いました。 大川 自分も借金王なので「消費者金融で1日にいくら借りられるか」に挑戦したことがあります。でも、本当に金利が半端じゃなく高いんですよね。 夏目 いつも金策をして、期限が迫ったものから順番に払う日々でした。 大川 夏目さんも自分と同じ「借金王」だったんですね(笑)。 ● 正しい素材を正しく使えば 誰にでもおいしいチョコは作れる 夏目 でも、振り返ってみるといい思い出しかありません。同世代の友人は就職した会社の中で出世していきましたが、一緒に飲んでも会社の愚痴しか言わないんです。話を聞いていてもつまらない。その点、自分は幸せな人生だと思っています。 大川 パン屋さんの他にも、印刷、配送、カフェ、クリーニングなどの事業もやられていたそうですが、チョコレートの製造販売を始めたのはいつからですか。