モバイルPCゲーム性能対決!最新Core UltraとRyzenはどっちがいい?
2024年に登場したモバイル向けCPUでは、Intel/AMDの双方で内蔵GPUの強化が図られている。旧世代のCPUでも「そろそろディスクリートGPUがなくてもいいのでは」という声が聞かれたくらいなので、内蔵GPUがどのくらいのパフォーマンスを出せるのかはとても気になる。 【画像】Intel製CPU「Core Ultra 7 258V」を搭載した「Zenbook S 14(UX5406SA-TU7321GR)」 今回はASUSにご協力いただき、Intel製CPUでは「Core Ultra 7 258V」、AMD製CPUでは「Ryzen AI 9 HX 370」を搭載したPCをお借りした。なるべく対等な環境で検証するため、今回は双方とも14型ノートPCで揃えている。 記事目次 (1)14型の最新ノートPCで比較 (2)ベンチマークテストで見える両者の違い (3)ゲームのフレームレートをチェック (3-1)サイバーパンク2077 (3-2)フォートナイト (3-3)Apex Legends (3-4)ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON (3-5)Cities: Skylines II (3-6)ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン (3-7)ディアブロ IV (3-8)マインクラフト (4)ディスクリートGPUを必要としないタイトルがかなり増えた ■ 14型の最新ノートPCで比較 お借りしたPCは、Intel製CPU搭載機が「Zenbook S 14(UX5406SA-TU7321GR)」、AMD製CPU搭載機が「Vivobook S 14(M5406WA-AI9321W)」となっている。両機種のスペックは下記の通り。 スペックに関して注目すべきところが数点ある。まずはメインメモリで、Intel側の「Zenbook S 14」はLPDDR5X-8533、AMD側の「Vivobook S 14」はLPDDR5X-7500と少し差がある。Core Ultraシリーズ2からはメモリがCPUと同じパッケージに収められているためだ。CPU内蔵GPUにおいては、メインメモリからグラフィックス用メモリをシェアするため、メインメモリの速度がグラフィックス処理能力に直結する。今回であればIntel側が若干有利となる。 次は筐体サイズで、「Zenbook S 14」の方が2~3mm薄くなっている。薄型筐体は冷却が難しくなるため、少しでも高い性能を引き出したいゲーミング用途では薄型筐体は不利になる。 ACアダプタの出力を見ると、「Zenbook S 14」は65W、「Vivobook S 14」は90Wで、25Wも差がある。性能的には供給電力量が大きいAMD側の方が有利になると思われる。その分、より高い冷却性能が求められるはずで、筐体の厚みの違いはこれに対応するためとも言える。実際、高負荷時には「Vivobook S 14」の方が冷却ファンの騒音は大きかった。 というわけで、スペック上ではIntel側、AMD側にそれぞれ一長一短ある状態だ。ここからは実際のパフォーマンス検証に移っていくが、この差を頭に入れておくと、より興味深いデータに見えるかもしれない。 ■ ベンチマークテストで見える両者の違い 検証にあたり、管理アプリ「MyASUS」にて、グラフィックスに割り当てるメモリを8GBに設定した。通常はメインメモリから自動で割り当てられるのだが、あらかじめ設定しておく方がパフォーマンスが安定しやすく、各ゲームのグラフィックス設定でも手間取らない。また2機種とも同じ設定ができたので、イコールコンディションにしている。メインメモリが32GBと潤沢にあるからこそできる設定だ。 まずは各種ベンチマークテストから試す。利用したのは、「PCMark 10 v2.2.2704」、「3DMark v2.29.8294」、「VRMark v1.3.2020」、「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」、「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」、「Cinebench 2024」。 ベンチマークテストだけでも、結構面白いデータが出ている。まず目に付くのはCPU性能の差。4Pコア-4EコアのCore Ultra 7 258Vに対し、12コアのRyzen AI 9 HX 370は、マルチスレッドで圧倒的に強い。CPUパワーを必要とするゲームでは差が付く要因になりそうだ。 グラフィックス性能においては、「3DMark」のデータを見るに、かなり拮抗している。重めのテストではIntel側がやや優勢ながら、それ以外では勝ったり負けたりしている。 そして注目すべきは、ゲーム系ベンチマークテストのスコア。ゲーミングPCと比較しやすいよう、あえて最高画質でテストしたところ、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」と「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」は、両機種とも「普通」の評価となっている。 また「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」では、解像度がフルHDとなる設定「LOW」で満点を達成。もう1つ下の「LOWEST」だと解像度が下がってしまうので、これで最低限のプレイ環境は整ったと言える。内蔵GPUでもついにここまで来たかと感慨深い。 ■ ゲームのフレームレートをチェック 続いて実際のゲームのパフォーマンスを見ていく。ゲーミングPCのデータと比較しやすいよう、解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)に設定する。それ以外の場合には特記する。 □サイバーパンク2077 描画負荷が重いゲームであると同時に、最新テクノロジーにもすぐさま対応することで、比較テストにはとても重宝するタイトル。テストは本作に搭載されているベンチマークを実行した。設定はグラフィックスのクイックプリセット「低」と「レイトレーシング:低」の2つを使用した。 Intel側はXess 1.3、AMD側はFSR 2.1が使用できる。この状態では、双方とも平均60fpsを超えており、レイトレーシングを有効化しても30fpsを上回っている。 さらにAMD側でFSR 3のフレーム生成も使用すると、100fpsを超える。レイトレーシングありでも60fps近くまで出せるので、プレイ環境として現実的なラインだ。この結果はかなりインパクトがある。 □フォートナイト 基本プレイ無料で人気のアクションシューティング。クオリティプリセットを「中」としつつ、アンチエイリアス&スーパー解像度の設定では、Intel側は「Intel XeSS」を使用。AMD側はFSRの設定がないため、「TSR最高」を選んだ。どちらも3D解像度が50%になるよう、テンポラルスーパー解像度はIntel側が「バランス」、AMD側は「パフォーマンス」に設定し、バトルロイヤルを1戦プレイした。 双方とも平均フレームレートは90fpsを超え、プレイ環境としては申し分ない。内蔵GPUでも十分と言えるレベルに達している。 □Apex Legends こちらも長らく人気の高いFPS。比較的フレームレートを上げやすいタイトルなので、画質設定はあえて最高設定とする。ただしVRAMの量の都合で、スポットシャドウディテールだけは2段階目の「最高」に設定した。これでトレーニングモードを1周する。 フレームレートはAMD側がやや高めで80fps超え。Intel側も70fpsは超えており、それほど大きな差はなく、どちらも不満のないプレイ感覚が得られる。さらに画質は下げる余地があるので、より高いフレームレートも狙える。 □ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON ロボットアクション「アーマード・コア」シリーズの最新作。映像品質を「最高」、自動描画調整は「OFF」にして、ミッション「テスターAC撃破」の出撃中のみ記録した。 こちらもAMD側が若干優勢だが、双方とも30fpsは上回っており、一応プレイは可能。ハイリフレッシュレートでプレイしたいと言わないのなら、画質を下げれば十分対応できる。 " id="contents-section-4-5">□Cities: Skylines II 都市開発シミュレーションゲームで、高画質かつ街が発展すると非常に処理が重くなる。今回はグローバルグラフィッククオリティを「低」に設定し、筆者が作成した人口4,000人程度の街を見渡すように動かした。 AMD側はFSR 1.0を使用したところ、平均フレームレートが30fpsを超えた。Intel側は20fpsを割っている。ゲーム内容的には高いフレームレートがなくてもプレイは可能だが、平均30fpsくらい出ているとプレイ感も損ねずよい手ごたえだ。 □ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン 最近発売されたばかりのRPG。3Dリメイクされているが、動作は比較的軽めなので、グラフィックスプリセットは「最高」とした。ゲームプレイを開始し、最初のバトルが終わるまでを計測した。 Intel側は90fpsを上回り、AMD側も80fps以上と十分な値だ。RPGなのでそれほど高いフレームレートは必要としないが、イベントシーンの多い作品なので、美しい映像を存分に堪能できる。 □ディアブロ IV ハック&スラッシュシリーズの代表作。俯瞰視点の見た目は2Dっぽさがあるが、実は緻密な3D描画がなされており、描画負荷が高い。本作には解像度スケーリング設定があり、Intel側はXeSS、AMD側はFSR 2が使える。設定はクオリティモードを「バランス」。クオリティプリセットを「中」にして、キヨヴァシャドからメニスタッドのウェイポイントまで、戦いながら歩いて向かう。 Intel側がやや優勢ながら、どちらも平均フレームレートが60fps前後と十分な値が出ている。XeSSやFSR 2がよく効いていて、プレイ中も違和感はなく快適だ。 □マインクラフト 世界一売れているゲームとして知られるサンドボックスゲーム。動作は3Dながら非常に軽いが、高性能なPCほど高いフレームレートを出せるのに加え、遠方まで見渡せるメリットがある。 描画距離の推奨チャンク数はどちらも50とかなり広い。アンチエイリアシングは2の設定で動かす。なお本作は細かい解像度設定が難しいため、両機種のディスプレイ解像度となる2,880×1,800ドットで動かしている。 平均フレームレートはかなり拮抗しており、どちらも100fpsに迫っている。見ている方向や周辺地形によって差は出るが、どちらも十分過ぎるほど快適な環境と言っていい。 ■ ディスクリートGPUを必要としないタイトルがかなり増えた 今回、IntelとAMDの最新CPUで比較するという形を取っているが、結果としては作品によって優劣はあるものの、かなりいい勝負をしているという印象だ。差が大きくなるのはAMD側がフレーム生成機能が動くFSR 3を使った時くらいで、基本的なパフォーマンスはだいたい同じくらいと言えそうだ。 CPU性能ではAMD側が圧倒的に有利だが、ゲームではGPU性能を問われることが多く、CPU性能の高さが特に有利に働いたという印象はない。ゲーム以外でCPU処理が必要な場面ではAMD側が有利になるが、Intel側は低消費電力でもAMD側と同程度のゲーミング性能を発揮できている、という言い方もできるだろう。 比較という目線を抜けば、どちらもCPU内蔵GPUとしては、従来とは段違いに高性能であることは間違いない。重めのゲームでも画質を下げれば遊べるものが多く、また下げたとして最低画質まで落とす必要はないと感じることがほとんどだ。 さらに描画が重いことはあっても映像的な破綻はないのも好印象。レイトレーシングも含めて動作自体には全く問題ない。これまではディスクリートGPUが必須と思われてきたタイトルでも、1回動かしてみる価値はあると思う。最近よく聞く「ローエンドのディスクリートGPUを食う性能」という言葉が、いよいよ現実味を帯びてきた。 なお今回は比較検証の視点から使用しなかったが、AMD側には「AMD Fluid Motion Frames 2(AFMF 2)」という新たなフレームレート向上技術もある。もちろんIntel側にも新たな機能は追加されていくだろう。今後はハードウェアのみならずソフトウェアも含めた進化を期待していきたい(検証が非常に複雑化するので悩ましい……)。
PC Watch,石田 賀津男