草笛光子×市村正規「《年配のご婦人とヨガデート》の相手は…。僕らには同じ血が流れてる。いまの僕たちにできる、若者とは違う舞台の取り組み方で」
歌と踊りと芝居と――。ミュージカルを愛し、数多くの作品に出演する草笛光子さんは、このすべてに熱心に取り組んできました。今回のゲストは、日本を代表するミュージカル俳優の市村正親さん。仲のいい2人の、よどみない掛け合いのなかに、互いへの敬意が滲み出ています(構成=篠藤ゆり 撮影=天日恵美子) 【写真】「せめてあと1回は共演しようよ」「私、ちゃんとステップ踏めるかしら」 * * * * * * * ◆まだまだ踊っていたいけれど 市村 ヨガといえば、僕が通っているマグマヨガにいっぺんお連れしたことがあったね。 草笛 ああ、あのものすごく暑い……、 市村 敷き詰められた溶岩石の上で、ヨガや有酸素運動を1時間くらいやるんだけど、ものの5分もしないうちに、隣で「いっちゃん……、暑い……」って。(笑) 草笛 だって、汗がだらーっと出てくるのよ。 市村 「ちょっと温度下げて」って言われたんだけど、それは無理なのよ(笑)。みんな、汗をかきたくてきてるんだから。僕も草笛さんに無理させたくなかったから気をつけて様子を見てたけど、えらかったよね。結局1時間のクラス、最後までいたじゃない。 草笛 あなたはいまも通ってるんでしょ?すごい。
市村 週に3回は行ってる。しかもさ、あの日週刊誌に撮られたじゃない。後ろ姿だったから相手が草笛さんだとわからなかったみたいで、「市村、年配のご婦人とヨガデート」みたいなことを書かれたのよ。 草笛 そりゃあ、5、6年前だって年配だからしょうがないけど(笑)、そんなものを撮る人がいるんだわってびっくりした。あなたが「ヨガに行こうよ」って言うからついて行っただけなのに。 市村 違うでしょ。「連れてって」って言うから連れてったんだよ(笑)。まあ、草笛さんも日々トレーニングを続けられているわけだし、僕は舞台に上がった草笛さんが観たいね。まだまだやってほしい役があるの。 『サンセット大通り』のノーマとか、『リトル・ナイト・ミュージック』のデジレとか。デジレのナンバー、「Send in the Clowns」をぜひ歌わせたい。 草笛 (メロディーを口ずさんで)あの歌、大好き! 市村 僕は、尊敬する島田正吾先生と、彼が89歳のときにお友達になったんですよ。それから98歳で亡くなるまで、毎年島田先生の一人芝居を観に行った。 正月にリハーサルをして、夏までかけて稽古して、新橋演舞場で1週間の公演をする。それをルーティンにしてらした。島田正吾先生のようになる、というのは僕の目標でもあるんだよね。 草笛 色気のある役者だったわね。 市村 晩年は耳を悪くしてらしたけど、相手の台詞がない一人芝居ならできる。ある程度の年齢になったら、体になにかしら不都合が出てくるのは仕方ないじゃない。 それをどうカバーし、さらにいい演技を目指すかを考えないと。僕の場合、『NINAGAWA・マクベス』で膝をやっちゃってるから。 草笛 じゃあ、踊るのが大変ね。 市村 長くこの仕事を続けるためには膝に負担をかけないダンスしかできなくて、ジャンプやターンがダメなの。それが悔しい。僕はもともと小川亜矢子先生のところでバレエを学んでこの世界に入ったので、歌はあと。だからやっぱり踊りたくてね。