草笛光子×市村正規「《年配のご婦人とヨガデート》の相手は…。僕らには同じ血が流れてる。いまの僕たちにできる、若者とは違う舞台の取り組み方で」
◆みっちゃんといっちゃんはできる! 草笛 それを言えば私だってあちこち痛いわよ。でもさ、いまでも足は上がるわよ、ほら。(上げてみせる) 市村 みんな言ってるよ。草笛さんみたいに、あの年齢で、あの美しさで、あの口跡で芝居をできる人はほかにいないって。 草笛 確かに口跡はとても気を使ってます。たとえ小声でしゃべるシーンでも、自分にだけ聞こえるようなふにゃふにゃした声でいい気になっていてはダメ。言葉はお客様に届けないと。「何々してくださいね」の「ね」まできっちり聞こえるようにね。そのためには歯も大事なので、定期的にメンテナンスしているの。 市村 じゃあ、せめてあと1回は共演しようよ。芝居と歌とちょっと軽いステップとかでさ。 草笛 歌はできるけど、私、ちゃんとステップ踏めるかしら。
市村 あのさあ、草笛さんってときどきそういう傷ついたような顔をしてみせるよね。(モノマネをして)よくこんな顔するでしょ? 草笛 私、そんなうらめしそうな目、しないわよ。 市村 してるって!叱られた子どもみたいな顔で、上目遣いしてさ。そう、その顔だよ!(笑) 草笛 あなた、人のマネがうまいのね。(笑) 市村 役者ですから。いまの僕たちには、若者とは違う舞台の取り組み方があるんじゃないかな。一所懸命稽古を積み重ねたうえで、舞台では軽やかに演じたい。 草笛 この年齢でしか出せない所作というのもあるしね。努力のあとは見せず、鼻歌まじりで。それができるお年頃だもの。 市村 だから僕らには同じ血が流れてるって言ったでしょ。「あの年齢でよく動くよなあ」というのが、僕らへの世間の評価なのよ(笑)。だから、みっちゃんといっちゃんはできる! 草笛 じゃあいっちょ、大人の粋を見せますか。 (構成=篠藤ゆり、撮影=天日恵美子)
市村正規,草笛光子