「この理屈は本当に正しいのか?」…若い合議体が最高裁判決に感じた違和感とは?
「裁判官」という言葉からどんなイメージを思い浮かべるだろうか? ごく普通の市民であれば、少し冷たいけれども公正、中立、誠実で、優秀な人々を想起し、またそのような裁判官によって行われる裁判についても、信頼できると考えているのではないだろうか。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 残念ながら、日本の裁判官、少なくともその多数派はそのような人々ではない。彼らの関心は、端的にいえば「事件処理」に尽きている。とにかく、早く、そつなく、事件を「処理」しさえすればそれでよい。庶民のどうでもいいような紛争などは淡々と処理するに越したことはなく、多少の冤罪事件など特に気にしない。それよりも権力や政治家、大企業等の意向に沿った秩序維持、社会防衛のほうが大切なのだ。 裁判官を33年間務め、多数の著書をもつ大学教授として法学の権威でもある瀬木氏が初めて社会に衝撃を与えた名著『絶望の裁判所』 (講談社現代新書)から、「民を愚かに保ち続け、支配し続ける」ことに固執する日本の裁判所の恐ろしい実態をお届けしていこう。 『絶望の裁判所』 連載第11回 『「当選結果は最初から決まっている」…元裁判官が「無意味」と一蹴した、いい加減すぎる『選挙制度』の実態』より続く
大阪高裁と那覇地裁沖縄支部での経験
局付経験ですっかり疲労困憊した私は、浜松の気楽な生活を懐かしく思い出し、今度は、比較的ゆとりのある地方の裁判所に勤務したいという希望を出していた。 しかし、ふたを開けてみると、人事は、大阪高裁の左陪席であり、次には東京に帰してやるから大阪に行ってくれと言われた。大阪では、新様式の判決書というそれまでの判決書に比べるとわかりやすく読みやすい判決書の提案を行う委員の末席をも務めた。 先の言葉から次の任地は東京かと思っていたが、現実には、次の人事は、那覇地裁沖縄支部の裁判長というものだった。赴任が決まってしばらくしてから、その支部に、嘉手納基地騒音公害訴訟が係属していることを知らされた。 私が沖縄に赴任させられたのは、長期迷走していたこの事件の審理を軌道に乗せ、早期に判決を下すためであった。東京で人を探したが適切な人物がみつからなかったので、結局、大阪高裁にいた私が選ばれたと、後になって人から聞いた。 私がその任に選ばれた理由はよくわからないが、おそらく、やみくもに強硬な訴訟指揮を行うような裁判官では原告代理人らの協力が得られまい、いずれかといえば学究肌で訴訟の進め方等に関する知識もある裁判官のほうが望ましい、という考えによることだったのではないかと思う。 日本を震撼させた衝撃の名著『絶望の裁判所』から10年。元エリート判事にして法学の権威として知られる瀬木比呂志氏の新作、『現代日本人の法意識』が刊行されます。 「同性婚は認められるべきか?」「共同親権は適切か?」「冤罪を生み続ける『人質司法』はこのままでよいのか?」「死刑制度は許されるのか?」 これら難問を解き明かす共通の「鍵」は、日本人が意識していない自らの「法意識」にあります。法と社会、理論と実務を知り尽くした瀬木氏が日本人の深層心理に迫ります。
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