メルセデス・ベンツ EV用電池のリサイクルに注力、しかし原材料の採掘は止められない
回収率96% ドイツに新リサイクル工場
メルセデス・ベンツのサプライチェーン責任者によると、バッテリーのリサイクル技術が発達しても、EV用のバッテリーを生産するためには常にレアアース(希土類)を採掘する必要があるという。 【写真】まだ6年? 意外と歴史が浅いメルセデス・ベンツの電気自動車【メルセデス・ベンツEQCを写真で見る】 (15枚) 同社は最近、ドイツのクッペンハイムに新工場を開設した。この工場では、既存のEVバッテリーから原材料の96%を回収できるとされている。最終的に年間2500トンの製品グレードのコバルト、銅、マンガン、ニッケル、リチウムが生産される予定で、これは約5000台のEVのバッテリーに相当する量である。 しかし、メルセデス・ベンツの生産・品質・サプライチェーン管理担当取締役であるイェルク・ブルツァー氏はAUTOCARの取材で、バッテリーのリサイクルによって完全な自給自足に至ることはないと述べている。「(採掘で調達する材料の)20%、30%、40%は常に必要になると思う。2040年頃にリサイクルが本格化するとしても、鉱山から出る新しい材料の大部分はまだ必要だ」 製錬などメルセデス・ベンツの従来の方法における材料回収率は80%と言われているが、クッペンハイム工場ではこれをはるかに上回る96%という数字を叩き出した。これは、熱エネルギーではなく水溶液を使って原料を分離する湿式製錬(湿式冶金)方式を採用しているためだ。工程は約2日で完了し、エネルギー消費も比較的少なく、工場の屋根に設置された350kWのソーラーパネルから電力を供給している。 湿式製錬では、まずバッテリーの充電状態をチェックし、シュレッダーに投入する。生じた破片は機械式の「洗浄機」(実質的には巨大なふるい)にかけられ、磁石で分離された後、真空乾燥され、コーヒープレスのような働きをする「フィルタープレス」にかけられる。 こうして「ブラックマス」と呼ばれる化学物質の黒い塊ができ、これを液体溶液に溶かしてプレスし、黒鉛を取り除く。この溶液はアンモニアと過酸化水素で中和され、アルミニウムと鉄の最後の痕跡を取り除くために再びプレスされる。 最後に、硫酸、アンモニア、有機溶剤で処理され、銅、コバルト、マンガン、ニッケル、リチウムの硫酸塩が生成される。 銅、マンガン、リチウムは液体として巨大なドラム缶に貯蔵され、コバルトとニッケルは結晶化してから回収・再利用される。