琴桜「辛抱してやれば賜杯を抱ける」 千秋楽相星決戦を制す
◇大相撲九州場所千秋楽(24日・福岡国際センター) ◇○琴桜(はたき込み)豊昇龍● 【写真で見る】鯛を手に 初優勝を喜ぶ琴桜 28年ぶりに全6場所の入場券が完売した一年納めの場所を、27歳の琴桜が締めた。21年ぶりの大関同士による千秋楽相星決戦を制し、大関5場所目にして初優勝をつかんだ。「苦しい思いもあった。辛抱してやれば賜杯を抱けると実感できた」 落ち着いて豊昇龍の攻めをさばいた。右のど輪をこらえる。右上手を取られ寄り立てながらの投げを打たれても残す。左で上手を切ろうとすると同時に右ではたくと、豊昇龍は右足を滑らせて土俵にはった。「がむしゃらに取っていて内容は全然覚えていない」 大関2場所目の夏場所で第53代横綱だった祖父のしこ名を継いだ。祖父と同じ27歳・大関5場所目での初優勝を取組直後、問われると、支度部屋で普段は感情を表に出さない琴桜が「間に合って良かった」とこの時ばかりは笑顔を見せた。 どちらかといえば、体の柔らかさを生かした守りの相撲だが、今場所は果敢に前に出た。昨年夏場所の横綱・照ノ富士以来となる14勝での優勝に、八角理事長(元横綱・北勝海)は「立派」と評価した上で「優勝して楽に相撲が取れるのでは」と期待する。高田川審判部長(元関脇・安芸乃島)は「来場所の相撲いかんではおのずと夢に近づく」と話す。 綱取りがかかる来年の初場所に向け、琴桜は「自分らしくやっていくことが大事。強い気持ちで臨みたい。先代親方(祖父)や師匠(父の佐渡ケ嶽親方)にはない相撲を取っていきたい」と意気込みを示した。【武藤佳正】