生成AIでがんを効果的に攻撃する免疫細胞を「デザイン」、短期間での治療法開発に期待…NECなど
NECなどの研究チームは、独自の生成AI(人工知能)技術を活用して、がんを攻撃する力の強い免疫細胞を新たに作製することに成功したと明らかにした。AIで免疫細胞の遺伝子配列をデザインすることで、効果の高いがん治療法を短期間で開発できると期待される。チームが7日、米国がん免疫療法学会で発表した。
体内でがんができると、免疫細胞の一種「キラーT細胞」が、がん細胞の表面にある物質を目印として認識して攻撃する。しかし、効果的に攻撃するキラーT細胞が体内で作られないと、がん細胞は増殖する。特定のがんを攻撃する免疫細胞を培養して体外から投与する治療法は近年、注目されているが、効果の高い免疫細胞を選ぶのは困難だった。
チームは、文章を作り出す生成AIの技術を応用し、T細胞の遺伝子配列を生成するAIを開発した。実際に皮膚がんの細胞に対し、結合力の高いT細胞を作製できることを確認したという。遺伝子配列を変えれば、別の種類のがんを攻撃するT細胞になるという。
作製したT細胞の効果を確認する実験を行った愛知県がんセンターの松下博和・分野長(腫瘍免疫学)は「今回の成果は、AIを活用した革新的ながん免疫療法の開発への第一歩となると考えられる」と指摘している。NECの森大輝・AI創薬統括部主任は「今後さらにAIの性能を上げるとともに、製薬企業と共同して新たな治療法の開発を進めたい」と話している。