むしろ2024年にピッタリ! ホンダ・インサイト アウディA2(2) 軽く小さいクルマは走りも楽しい
軽く小さいクルマのエンターテインメント性
本当に軽く小さなクルマが、いかに高いエンターテインメント性を備えているのか、改めて痛感せざるを得ない。ここでは、大は小を兼ねていない。 動的な活発さが光るのはA2。ややスローレシオなステアリングへ、積極的に反応する。慣性が小さく、トップ・アスリート級に敏捷。ヘアピンカーブも、水を得た魚のように駆け抜けられる。 タイヤ幅は185と細いが、グリップ力も充分。前後アクスルへ荷重が分配され、操縦性のバランスも良い。ボディロールは小さく、フラットに旋回できる。 ちなみに2000年の英国編集部は、B5系のRS4より、A2の方が優れたドライバーズカーだと評価している。冗談のようだが。 つぎはぎの多い都市部の舗装では、乗り心地はゴツゴツと滑らかではない。だが、それが唯一の弱点だろう。 サスペンションが柔らかいインサイトは、乗り心地が良好。スタイリングレシオは、A2よりクイック。ただし、タイヤ幅は165と更に細く、気張りすぎるとグリップが抜けてしまう。 それでも、重心が低く車重も軽く、身のこなしは鋭敏。カーブを安定して旋回し、正確にライン取りできる。途中に凹凸があっても、高い速度域を保てる。運動エネルギーが無駄にならず、優れた燃費にも結びつく。
2024年の状況にバッチリ応えられる?
パッケージングやエネルギー効率の優秀さを知ると、冷遇された25年前が残念に思えてくる。少なくとも、インサイトは北米で一定の支持を集め、7年間のモデルライフで1万4000台以上が売れた。他方、欧州では約400台に留まった。 その頃のホンダは、ハイブリッド・システムを実証する旗振り役だと主張していた。確かに、その役割は果たせたといえる。世界市場をリードする、現在の日本車のハイブリッド技術を見れば、説明は不要だろう。 対するA2は、アウディに落胆を残しただけかもしれない。メルセデス・ベンツAクラスのライバルとして想定されたが、販売は4:1の割合いで大差が付いた。しかも開発・製造コストが高く、1台売れる毎に4000ポンドの損失が生まれたとか。 2024年の自動車には、25年前以上に環境負荷を抑えることが求められている。この2台が、今という状況にバッチリ応えられると感じるのは、筆者だけだろうか。 挑戦的で楽観的だった、1990年代の自動車メーカーの姿勢も、魅力的に思えてくる。当時のデザイナーやエンジニアの洞察力にも、感心せざるを得ない。 A2のデザインは、まったく古びていない。インサイトのパワートレインは、現在でも通用する。無責任なアイデアかもしれないが、それぞれ必要なアップデートを加えて1台に融合したら、悪くない競争力を持つモデルが完成するかも。