<2020センバツ交流試合>プロ注目の大分商・川瀬と強打の花咲徳栄が開幕ゲームで対決 第1日第1試合
2020年甲子園高校野球交流試合(日本高校野球連盟主催、毎日新聞社、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)が8月10日から、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で行われる。10日の第1試合で対戦する大分商(大分)と花咲徳栄(埼玉)の見どころや両チームの戦力、学校紹介、応援メッセージを紹介する。 【写真特集】開幕ゲームを戦う大分商と花咲徳栄 ◇花咲徳栄、17年夏V時の強打ほうふつ 大分商は接戦に強さ プロ野球のスカウトが注目する最速148キロ右腕の大分商・川瀬堅斗と、昨秋の公式戦チーム打率3割9分を誇る花咲徳栄打線の対決がポイントとなる。 プロ野球・ソフトバンクの川瀬晃(ひかる)選手を兄に持つ川瀬は、変化球も多彩。OBの森下暢仁(まさと)投手(広島)が明大在学時に伝授した、縦に割れるカーブも効果的だ。制球力もあり投球術も巧みで、渡辺正雄監督は「川瀬中心にロースコアに持ち込むしかない」と語る。ただし7月4日の練習試合で左脚を痛めており、万全の状態で臨めるかが鍵になる。 花咲徳栄は2017年夏の甲子園で優勝した頃のような強打が健在。19年秋の関東大会1回戦の拓大紅陵(千葉)戦は二回までに7点を奪い、圧勝した。中心は昨秋までに高校通算47本塁打の右のスラッガー、井上朋也。岩井隆監督は「フルスイングで攻撃を前面に出していく」と自信を見せる。川瀬が本調子を欠けば、序盤で優位に立つ可能性もある。 一方、関東大会2回戦の山梨学院戦で1点しか奪えずに敗れるなど花咲徳栄打線は粗さもある。後半勝負になれば、昨秋の九州大会で挙げた3勝がすべて3点差以内と接戦に強い大分商の流れになる。【吉見裕都】 ◇創部100年、節目の白星目指す大分商 23年ぶりのセンバツへの切符を手にしながら、新型コロナウイルス感染拡大のために一度は夢を絶たれた。それでもセンバツ交流試合で甲子園の土を踏めることになり、選手の士気は高まっている。 甲子園出場回数は県内最多の春夏通算21回(中止となった今春のセンバツを含む)。「大商(だいしょう)」の愛称で親しまれる古豪で、甲子園では春夏計5回のベスト8進出を果たしている。 公立校のため寮はなく、グラウンドはサッカー部と共用。練習環境が整っている私立の強豪の壁に阻まれるなどして、平成の30年間で甲子園に出場したのは3回だった。 しかし令和になって、チームは躍進した。昨秋の県大会でノーシードから勝ち上がって準優勝すると、九州大会では準々決勝で福岡第一、準決勝で鹿児島城西と、私学勢を連破して準優勝した。 チームをけん引したのは、140キロ台後半の速球を誇る本格派右腕の川瀬堅斗(3年)。主将を務め、打者としても昨秋の公式戦でチーム最多の9打点。まさに大黒柱だ。 中堅手の渡辺温人(3年)は、50メートル5秒75の俊足を生かした守備範囲の広さが持ち味。遊撃手の岩崎竜也(3年)は状況に応じて守備位置を指示する司令塔の役割を担う。 新型コロナの影響で、県立高校は3月から臨時休校が続いた。6月1日からようやく全体練習が再開され、チームは再始動。渡辺正雄監督は「正式に甲子園に立てるのがうれしい」と話し、川瀬は「チーム全員で勝利をつかみ取って、全国の皆さんに大分商業の野球を見せつけたい」と意気込む。 創部100年目の節目の年。大商が目指すのは憧れの舞台、甲子園での一勝だ。【辻本知大】 ◇大分商・川瀬堅斗主将の話 (花咲徳栄は)投打ともに本当にレベルが高い。大会が決まってからモチベーションが上がり、目標に向かってみんなで取り組んでいる。(甲子園では)悔いなく頑張りたい。 ◇甲子園最高成績は春夏とも8強 1917年創立。男女共学で商業科、国際経済科、情報処理科がある。校訓は「士魂商才」「質実剛健」。野球部は21年創部で、センバツは32年に初出場。最高成績は春夏とも8強。OBに岡崎郁さん(元巨人)、源田壮亮選手(西武)、森下暢仁投手(広島)ら。大分市。 ◇「最高の舞台で県民に勇気を」大分商野球部保護者会長・川瀬保生さん 選手たちが小さい頃から憧れてきた甲子園。3年生にとっては最後の公式戦になるので、楽しむとともに、これまでの集大成を見せてください。 センバツの中止が決まっても、選手、監督、保護者らは1%でも可能性があればと信じてきました。選手たちは、夏の大会も中止になり、何度も心を折られてきました。そうした中で、センバツ交流試合を実現していただいた関係者の方々には感謝しかありません。しかも、開幕戦という最高の舞台が用意され、今からドキドキしています。 県内では、7月の豪雨で大きな被害が出て、今も困難な状況にある方が大勢います。大分商らしいプレーを見せて、県民の皆様を勇気づけてください。 ◇泥臭く勝利へこだわり 花咲徳栄 2019年まで夏の甲子園は5年連続で出場し、17年夏には埼玉県勢初の全国制覇を成し遂げた。1試合限定のセンバツ交流試合にも、選手たちは「勝利にこだわる」と闘志を燃やす。 昨夏の甲子園経験者を中心に臨んだ秋季関東大会は、1回戦で拓大紅陵(千葉)に11- 1でコールド勝ち。2回戦は準優勝した山梨学院に1-2で惜敗したが、強豪校の実力をのぞかせた。 昨秋の公式戦では、チーム打率3割9分の強打が光った。秋までに高校通算47本塁打を放った主将の井上朋也(3年)や攻守に秀でた田村大哉(3年)、打率5割2分9厘の浜岡陸(2年)らが打線を引っ張る。投手陣は、昨秋の公式戦で防御率1.13の安定感を誇った主戦の左腕・高森陽生(3年)、右腕の須田新太(3年)らが控える。 6月に交流試合出場が決定した際、野球部の寮で知らせを受けた選手らは「ありがとうございます」と落ち着いた表情で喜びをかみ締めた。抽選会で開幕試合を引き当てた井上は「スタートにふさわしい試合にしたい。勝利にこだわり、泥臭く1点ずつ取りたい」と意気込む。 新型コロナウイルス感染拡大の影響で3月から部活動を自粛していたが、6月下旬に寮生と自宅生が合流し、全体練習を再開。3年生を中心にモチベーションは非常に高く、特に打撃練習に力を入れ、練習試合を重ねて実戦感覚を磨いている。 対戦相手の大分商について、岩井隆監督は「速球が持ち味の川瀬堅斗投手を中心に、非常に粘り強さがある」と分析。「甲子園は子どもたちを大きく成長させてくれる特別な場所。選手はタフに戦ってくれると信じている」と期待を込めた。【成澤隼人】 ◇花咲徳栄・井上朋也主将の話 (大分商について)エースで4番の川瀬君を中心にまとまっている。もう一度、仲間と野球ができることに幸せを感じ、最高のパフォーマンスを発揮できるように準備したい。 ◇82年創立 卒業生にはボクシングの元世界王者も 1982年創立の私立共学校。野球部も82年に発足した。部活動が盛んで、女子硬式野球部は全国高校女子選抜大会で優勝3回。OBにプロボクシング元世界王者の内山高志さん、若月健矢捕手(オリックス)ら。昨夏の甲子園で3番の韮沢雄也選手がドラフト4位で広島入りした。埼玉県加須市。 ◇「開幕戦らしい爽やかなプレーを」加須市長・大橋良一さん 春夏合わせて10回は甲子園球場に応援に行きました。暑い夏のアルプススタンドで、名物のかちわり氷で涼をとったこともあります。時折いい風が吹いてね。選手にとってはボールが流れて大変だと思います。交流試合は無観客で、練習通りのプレーができるとも考えられますが、やっぱり野球は応援と一体です。ぜひ応援に行きたかったですね。 花咲徳栄高校は監督さんをはじめ、地域とのつながりを大事にしてくれるチームで、応援のしがいがあります。甲子園で再びプレーできる喜びをチームの皆さんと分かち合い、地元の加須市から応援しています。開幕戦にふさわしく、コロナと暑さに負けない、爽やかなプレーを期待します。