イラン核協議 反対勢力は誰?
11月7日から9日にかけて、スイスのジュネーブでイランの核開発問題について、国連安保理常任理事国(米英仏露中)にドイツを加えた6カ国とイランとの間で交渉が行われました。しかし交渉は成功しませんでした。そして20日に同地での交渉の再開が予定されていますが、交渉に反対している勢力が世界にいくつかあります。誰が反対しているのでしょうか。【高橋和夫・放送大学教授】 [図解]イラン核協議の構図
反対しているのはイスラエルとサウジアラビアなどです。そしてイスラエルの影響の強いアメリカ議会の一部です。イラン国内の一部の強硬派も交渉を歓迎していません。
焦点の1つはウラン濃縮
さてイランは否定しているものの、同国が核兵器開発を目指しているのではないかとの疑惑を国際社会は抱いており、イラン原油の輸入禁止を含む厳しい制裁措置を欧米が主導してきました。 焦点の一つはウラン濃縮でした。自然界のウランを濃縮すると原子力発電の燃料となります。さらに濃縮を続けると原子爆弾の材料となります。同じ技術が平和と軍事の両方に使われるのです。イランはウラン濃縮は核の平和利用であり認められるべきだと主張し、各国は兵器製造への技術移転を懸念しています。 交渉では、米国からの提案が討議されたようです。まずイランは濃縮を核兵器に転用できないレベルである5パーセント以下に留める。国際社会はイラン資産の凍結を解除する。この暫定的な合意を第一歩として全面的な合意を目指して交渉を継続する。という内容だったようです。双方は合意寸前でした。ところが最後の段階で仏外相が反対して合意が成立しませんでした。
イランに敵意持つイスラエル
仏の反対の理由は、まず自己の存在感を示したかったからだと思われています。またイスラエルやサウジアラビアの意向も反映した形となりました。 イスラエルやアラブ諸国の一部は、イランに対して強い敵意を抱いています。イスラエルは中東における唯一の核保有国として、核の独占を維持し続けたいのです。公表こそしていませんが、イスラエルは大量の核兵器を保有しています。サウジアラビアなどのイスラム教スンニー派アラブ諸国は、シーア派のイランとシリア内戦などで激しく対立しています。しばしば混同されますが、イラン人は古代ペルシア帝国にルーツを持つ民族でアラブ人ではありません。この民族的な差異も対立の背景です。 イランがウラン濃縮技術を保有する限り、いつでも核兵器を製造できる。それは許容できない。というのが交渉に反対する理由です。つまりウラン濃縮能力の完全な解体と濃縮ウランのイラン国外への搬出を求めています。