『あのちゃんねる』小山テリハ氏、番組を守り続けて異例の地上波復活 あのちゃんとの“物語”で受ける刺激とリスペクト
――それでも、インプットの時間はちゃんと確保されているのですか? あのちゃんのライブも櫻坂46さんのライブも行くし、映画を見に行ったりとか漫画を読んだりとか、気になったものは見ていますが、意味合い的には現実逃避の部分もあると思います。「SNSにこれ出さなきゃ」とか「次の収録のキャスティングどうなってるかな」とか、常に仕事のことを考えちゃうんで、そんな中で何かに没頭することでその瞬間だけ全部忘れられるという救いになってるんです。好きなものの延長が仕事になってることが多いから、オンとオフがないんですけど、忙しくても好きでやれちゃってるのかもしれないです。 ADの頃は友達と会う時間もなかったですが、最近はテレビ東京の大森くんやフジテレビの原田(和実)くんと『あたらしいテレビ』(NHK)に出て以降ちょくちょく会っていて。近況とか面白かった作品とか「これどう思う?」とそれぞれの環境でちょっと気になったことを何でも話せて、そういう同志ができたことがすごく心強かったりしてます。
「独自すぎるプラットフォーム」テレビに感じる可能性
――今後こういうコンテンツを作っていきたいというものは何でしょうか? 『イワクラ吉住』も『サクラミーツ』も『あのちゃんねる』も、面白いことを女性と一緒に作って、それをどんどん大きくしていきたいという展望があります。『サクラミーツ』のイベントの幕間でドラマを撮ったんですが、その撮影が面白かったので、今度はちゃんとした映像作品を作って映画館とかで上映できないかなとか、『あのちゃんねる』はあのちゃんの“子ども番組”もやりたいし、おじいちゃん・おばあちゃんが見ても面白いと思ってもらえるようになりたいし、裾野をどんどん広げたいなと思っていて。 『あのちゃんねる』の企画を見てあのちゃんのライブに行きましたとか、『サクラミーツ』を見てメンバーが面白いと思ってファンになりましたというのを聞いたりするので、テレビの中でもそうですが、面白いな・見つかってほしいなと思う人たちを集めたフェスみたいなイベントもできたらいいなとも思ったりします(笑)。アイドルをいつかプロデュースしてみたいなという憧れもあります。テレビ局なので、事務所さんの垣根も関係なくフラットにものづくりができると思うんです。 ――そうした面で、テレビ局の役割は大きいですよね。 『ホリケンのみんなともだち』でいろんな企業さんにロケに行くと、「テレビだ!」ってすごく喜んでいただけることが多いんです。その価値を重んじてくれる人がまだまだいっぱいいて、OA後に「過去一番の反響が来ました」と言ってもらえると、すごくうれしいなと思います。 おばあちゃんがお孫さんの働く姿を見に行く『本日のお客様は、あなたのおばあちゃんです。』というドキュメンタリーもやったんですけど、おばあちゃんがコロナ禍にわざわざ福島から六本木のバーレスクで働く子を見に来てくれて、「この番組がなかったら、孫の働く姿なんて一生見られなかった」って喜んでくれたんです。その時、グッと熱いものがあったし、テレビ局っていろんなものを超えられる力があるなと思って。私が他の企業で働いてる人だったら話すら聞いてもらえないことも、テレビ局の人間として提案すると「じゃあやってみたい」とある程度の安心感もあってやってくれたりするわけじゃないですか。このテレビという独自すぎるプラットフォームの可能性は、めちゃめちゃ感じますね。 (テレビ東京の)大森くんも最近、展示をやったり映画上映をしたりしてますが、テレビって番組と連動したら何でもできるんですよね。最近、それがどんどんオープンになってきた気がします。昔は地上波の世帯視聴率しか求められなかったけど、今は会社から「どんどんいろんなことやっていこうよ」っていう雰囲気があって、私もちょうどいいタイミングで入社していろんなことをやらせてもらってるなと思います。 ■『ロンハー』『恋から』『マスカット』…全てが番組作りの根底に ――ご自身が影響を受けた番組は、何になりますか? 『アメトーーク!』とか『ロンハー』とか『恋のから騒ぎ』(日本テレビ)とか『おねだり!!マスカット』(テレビ東京)とか『美の巨人たち』(同)とか『タモリ倶楽部』(テレビ朝日)とか、いっぱいありますね(笑)。うちの家庭は結構ゆるかったので、見せたくない番組No.1になってた『ロンハー』の「格付けしあう女たち」で杉田かおるさんや飯島愛さんとかが出てるのがめちゃくちゃ好きで、小学生の頃毎週見てました。 深夜は『恋から』を見て、あの場所がめっちゃ楽しそうだったんで、いつか出てみたいなと思ってましたね。私は兄も姉もいないので、「格付け」も『恋から』も、お姉さんたちが私にとって背伸びした情報をくれる場所だったんですよ。『イワクラ吉住』はその影響を結構受けていて、イワクラさんや吉住さんが身近なお姉さんのような立場で深夜にしゃべって寄り添う存在でありたいと思って、質問も募集していたというのがあります。 『マスカット』は体当たりで頑張ったり、発想がすごくて、「こんな面白いAV女優さんいるんだ!」と思ってファンになって、ライブに行ったり、初めて観覧にも行った番組です。その思い出があって、葵つかささんが『イワクラ吉住』に出てくれた時はいろいろ縁を感じました。『タモリ倶楽部』の「空耳アワー」も大好きで、家族で見ているときに下ネタが流れて父親に「これどういうこと?」って聞いたら、「大人になったらたぶん分かるよ」みたいな感じで。 ――素敵なご家庭です(笑) 親が自分の見たいものを見てただけで、子どもが見てるからという線引きを気にしてなかったんですよね。『美の巨人たち』は、たまに再現VTRでちょっと変なことやるのが面白くて。テレビを作りたいと思いながら見ていたわけじゃないんですけど、幼少期に見ていた記憶が断片的にあって、今思い返すとそれが全部、番組作りの根底にあるなと思います。だから、『恋から』みたいに女子が集まってトークする番組とか、めっちゃやりたいです。 ――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”を伺いたいのですが… 作家の町田裕章さんです。『アメトーーク!』をやられていて、アイドルや漫画への造詣がすごく深い方で、テレ東さんの坂道3番組(『乃木坂工事中』『そこ曲がったら櫻坂?』『日向坂で会いましょう』)を全部やられています。すごい上のベテラン作家さんなのに、私の番組に最初の特番からずっと入ってくださって、番組の成立のところまで面倒を見てくれる目線を持ってくれるので、すごくありがたいです。
中島優