西武を去った松井稼頭央氏が半年ぶりに沈黙破る あの日若獅子やファンたちに伝えたかったこと
今季限りで西武を退団した前監督の松井稼頭央氏(49)が11月、ついに沈黙を破った。約半年ぶりに日刊スポーツなどの取材に都内で応じた。監督休養が決まった5月の“あの日”に選手たちやファンに伝えられなかった思いを口にした。 ◇ ◇ ◇ 松井氏は都心のビル風に「今年一番の寒さだね」と身を縮めた。5月末の休養発表から半年近く。「シーズン中はずっと(試合を)見たりして。来年は何も決まってないけど、早急に決めようとも思ってないかな」と現況を話した。 西武監督2年目の今季、開幕直後から黒星がかさみ、志半ばで戦列を離れた。「結果が出なかったらもう、そういう世界。僕だけじゃなく選手たちもそうなるっちゅうこと。それだけ厳しい世界です」。表情の険しさは寒さのせいだけではない。 在任中は厳しさを表に出さなかった。休養後には「優しすぎた」との報道やネットの声も多かった。それを受けた張本人は。 「それが僕やからね。それが松井稼頭央だからね、しょうがないよね」 そう言いながら添えた。 「表に出さなくても裏では若い選手にも言ってたので。古賀とかもよく。(報道対応では)僕は選手のことはほとんど言わなかったと思う。僕が(監督にメディア経由で)言われたら嫌だから。なんか言われるのは僕だけでいいんで」 たたかれる覚悟を持ちながら“優しげな松井監督”を外に見せ、勝利と育成の両立という難題に挑んだ。佐藤龍世内野手(27)や西川愛也外野手(25)など確かな芽生えもあった。 「龍世は本当に頼もしくなったし、西川だって。みんながみんなってなかなか難しいけど、誰かが頭一つ抜けていかなきゃ」 休養が決まったあの夜、ロッカールームで選手たちに話した。号泣する顔もいくつかあった。伝えきれなかった。あらためて若獅子たちに伝えたいことは。 「各自がどう感じてやるかが全て。どの監督になっても使ってもらえる選手にならないといけない。それだけ厳しい世界です」 メジャーでも時にブーイングを浴び、厳しい現実にも直面しながら日米通算2705安打。愛されたスターは、ファンに無言で去ったことにも後悔があった。 「最後の最後まで応援していただいて感謝です。いろいろありましたけど、結果で期待に応えることができなかったのはこっちの責任です。でも最後の最後まで、本当にありがとうございました」 またユニホームを-。期待の声も多い。「そう言ってもらえてうれしいよね。その時までに僕も、いろんなことを見ながら」。少年時代からずっと走り続け、やっと充電期間に入った。【金子真仁】