高齢化する世界、資産運用者に迫る変化と決断-課題は先送りできず
緊急性を求める声は、最近の証拠からも裏付けられる。韓国の出生率は記録的な低水準にあり、イタリアもドイツも出生数の減少を報告している。ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)や資産家スタンレー・ドラッケンミラー氏は退職危機の到来を警告している。
米国の「退職危機」と公的債務膨張、ブラックロックCEOが危惧
格付け会社フィッチ・レーティングスは昨年に米国を格下げした際、その理由の一つに高齢化によるコストを挙げた。
アッピオ氏は米国の「債務は非常に高い水準にあり、高齢化に関しては資金が不足している多くの課題を突きつけられている」と語った。
インフレ懸念
消費する高齢者が増え、生産年齢の若者が減るという単純な考えが、インフレ懸念の一部を成している。普遍的ではないものの広く受け入れられているこうした見方を背景に、特定の資産クラスがとりわけ注目されている。
ロイヤル・ロンドン・アセット・マネジメントは債券よりも株式や商品に傾斜している。同社のマルチアセット責任者トレバー・グリーサム氏は、高齢化とインフレが進む世界でポートフォリオを守るため、商品や商業用不動産のほか資源セクターの比重が相対的に高い英国株を選好しているという。
「われわれは戦略的資産配分において、人口動態によるインフレの影響について真剣に考えている」と同氏は語った。
こうしたインフレ懸念は、世界で最も高齢化が進み、かつ低成長とデフレの時代を経験した日本のケースとは相容れないように見える。
しかしマノジ・プラダン氏とチャールズ・グッドハート氏の共著「人口大逆転」によれば、日本の経験は恐らく特殊であり、今世紀に入ってからは安価な中国製品がディスインフレ圧力を加えた影響もあったとみられる。現在、中国発ディスインフレの力は人口減少や欧米との貿易摩擦で弱まりつつある。
株式にシフト
2050年までに人口の6人に1人が65歳以上になると、国連は予測している。世界全体で約50兆ドルを運用する年金基金にとって、そうした環境下で適切な投資を行うことは特に重要だ。