【商いのレッスン】節句人形は売れない?いや、売れます! 買わない理由を解消し売上を13倍に! 伝統産業を復活させた「ふらここ」のプロモーション
<今月のお悩み> 良い商品なのに狙った客層にリーチできずに困っています。 プロモーションの秘訣を教えてください。 良い商品なのに……。売れ行きの悪い商品を抱える売り手の多くが口にする常套句である。誰にとって良い商品なのだろうか。それが自分にとってでは論外だが、お客様にとって良い商品でも、伝わっていなければ価値は無に等しい。 これは、長い伝統を誇る業界にありがちな慣習を見直し、新たな価値を創造した起業家の話である。 「義父母から贈ってもらったけれど、どうしてもキャンセルしたい」という電話をかけてきたのは、小さなお子さんを持つ若い母親だったという。 同じような電話を何本も受け、その人は自らが身を置く業界に強い危機感を覚えた。節句人形製造販売「ふらここ」の創業者、原英洋さんである。 桃の節句と端午の節句は子の成長を願い、家族の絆を深める機会として古くから親しまれる日本の伝統的な季節行事である。しかし、その市場は衰退を続けている。団塊の世代の頃には270万人あった出生数がいまや70万人を割り込もうとしている。さらに、節句人形を購入するのは、その3分の1にまで減っているといわれる。 問題の根源には「伝統の呪縛」がある。七段飾りの雛人形に象徴されるように、節句人形を飾るには広いスペースが必要だが、現代のライフスタイルにはそぐわない。人形の顔はうりざね顔をもって良しとされ、そうしたものをつくれるのが良い職人とされてきた。しかし、それは今の子育て世代の好みにはほど遠いものだ。
需要減少の結果、業界には値引き販売が横行。価格は下がり続け、そのしわ寄せは作り手である職人に及んだ。伝統的な業界ゆえに、その伝統が変化への対応を邪魔した。節句人形は、人形のパーツを作る職人、組み立てる職人、それらを差配する卸、そして販売店という多層的な構造を持つ。その複雑さも、変化への対応を遅らせた。