子どもがすすんで「お手伝い」をしてくれた理由 池江璃花子さんの母親が子に伝えていたこと
お手伝いで責任感を育てる
お手伝いも、人間教育の一つです。 子どもは、いずれ親の手を離れて、自分の責任で世の中を生きていかなければなりません。身の回りのことを自分でできるようにするだけでなく、家のなかでの共通の仕事の一端を担うことで、将来、社会で責任を果たしていく準備にもなります。 私は母子家庭で仕事を持っていましたから、3人の子がいる家庭の家事をすべて1人でこなすのは、かなり骨が折れました。 少しでも家事の負担が軽くなれば……という思いもあって、私は3人の子どもたちには積極的にお手伝いをさせました。 お手伝いは、子どもが大きくなってからやらせようとしても、面倒なことをやらされているという意識が強くなり、難しくなってきます。小さい頃から、当たり前の習慣として身につけていくことが理想的です。 子どもには、大人のまねをしたがる時期があります。「まだ早いから」「危ないから」と手を出させないようにするのではなく、何でもやりたがる子どもの意欲を生かして、親の見守りのもとでやらせてみるとよいと思います。 もちろん、大人のようにうまくできるわけではありません。でも、初めから結果を求めるのではなく、子どものやろうとする意欲を認め、少しでもできた部分を大げさにほめてあげます。 すると子どもは、自分にもできたという達成感を味わい、「次はもっと上手にやりたい」という前向きな気持ちになります。 子どもにお手伝いしてほしいことは、「これを手伝ってよ」とか、「手伝いなさい」とか言うのではなく、「これはね、しっかりしてる子じゃないとできないことなんだけど、あなたならきっとできると思うわ」と言って仕事を渡します。
子どもがすすんでお手伝いをしてくれるための声掛け
我が家では、「しっかりしてきた」「何でもできるようになってきた」ことのごほうびとして、お手伝いをやってもらいました。 子どもは、何かできるようになることがとてもうれしいのです。そして、親にそれを認められると、さらに意欲が高まるのです。 実際にやってくれたら、(その出来栄え、仕上がり具合はともかく)ほめました。お手伝いは、ほめる"種"を植えることにもなります。こうして家庭のなかでの責任感も育っていきます。 たとえば、我が家では、「洗濯物たたみ」「食器洗いと後片づけ」「おふろの掃除」など、9つの家事をリストアップして、3人の子どもたちで分担してやってもらいました。当番表を作って壁に貼り、今日は誰が何をするのか、わかるようにしておくのです。 私は仕事をしていて時間がなかったので、子どもたちがそれぞれ自分の役割を果たしてくれて、本当に助かりました。 「子どもには難しい」「よけい手間がかかる」と言って、お手伝いをさせないよりも、多少難しいこと、それをやらないと家族みんなが困ってしまうようなことを与えることが大切だと思います。 「自分がやらなければ、ほかの人が困ってしまう。家がまわらなくなる」というくらいのものを背負うからこそ、そこに責任を感じるようになるのです。最初はうまくできなくても、「ママ、助かったわー」と認めて感謝しましょう。 何度も繰り返せば、少しずつうまくできるようになります。小さな「できた」という体験から、自信が生まれ、それはやがて、社会でも何かの役に立ちたいという奉仕の気持ちにつながっていくと思います。 【ポイント】お手伝いは、子どもが大きくなってからやらせるのではなく、小さい頃から、当たり前の習慣として身につけさせておく。
池江美由紀(東京経営短期大学こども教育学科特別講師)