ドラマ解説者が選ぶ!何度でも見たい最高の夏ドラマ3選
何度見ても色あせない 今なお夏ドラマの最高峰
かつて夏ドラマは夏休みや在宅率の低さから、「最も視聴率の獲れない厳しい季節」として扱われていた。しかし、その一方で、夏という季節の開放感にシンクロさせた「見ているだけでテンションが上がる」ような作品が誕生しやすいことも事実だ。ここでは、とびきり夏らしく、爽快な3作を紹介する。 真っ先に挙げておきたいのが、ド定番の夏ドラマ『ビーチボーイズ』(1997年、フジテレビ系)。放送から25年が過ぎた今なお「夏と言えばこの作品」の座に君臨し、何度見ても色あせず、みずみずしさを保っている。 舞台となった海の民宿「ダイヤモンドヘッド」の風景、ガス欠の車を押す桜井広海(反町隆史)と鈴木海都(竹野内豊)、花火大会と和泉真琴(広末涼子)の浴衣姿、反町と山本太郎の水泳対決、和泉勝(マイク眞木)が再びサーフィンに挑むシーン…大半の映像が夏を感じられるものだった。 当作の凄さはこれほど夏や海に特化しながら、誰にも当てはまる等身大の人間模様を描いていたこと。最終話の間際まで大きな出来事は起きず、日常から逸脱せず、それでいて一歩踏み出す勇気をもらえるような物語は岡田惠和ならではの脚本であり、静かな感動を与えてくれる。 さらに夏を舞台にした作品では珍しく、夏休みが終わったあとの初秋まで描いた点も特筆すべきポイント。放送当時、落差の大きさに戸惑いを覚える視聴者が続出していたが、悲しい出来事を経て、寂しくも希望のあるラストに着地させていた。決して夏の企画モノでも、ただのイケメンドラマでもない。毎年、夏になると必ず見たくなる名作と言い切っていいだろう。
五段やぐらの成功に歓喜 シリーズ屈指の感動作
もう1つフジテレビを代表する夏ドラマと言えば、『WATER BOYS2』(2004年、フジテレビ系)。山田孝之主演の第1シリーズ、瑛太主演の第3シリーズと比べても、メンバーの愛すべきキャラ、シンクロのレベル、最終話の感動など、すべての面で上回る最高傑作だ。 「9割以上が女生徒」の高校での部員集めから、練習場所探し、家族の反対、退学の危機など、次々に訪れるピンチを何とか乗り越えていくボーイズたち。市原隼人、中尾明慶、小池徹平らが見せる笑顔と友情の物語は何とも微笑ましいものがあった。 とりわけ2時間スペシャルの最終話は出色。台風の直撃など紆余曲折あって迎えたシンクロ公演は、歓声と笑いが飛び交う明るいムードで進んでいたが、クライマックスの演目で空気が一変する。これまで一度も成功したことのない五段やぐらに挑み、危険な失敗シーンもそのまま映したことで、視聴者にもボーイズの緊張感とスタッフの心配がひしひしと伝わってきた。ヒロイン・矢沢栞を演じた石原さとみも素の表情で必死に祈る中、最後の挑戦で見事成功。歓喜と涙が爆発した瞬間は、ドラマの枠を超えた一級品のドキュメンタリーでもあり、ドラマ史に残る名シーンとなった。 ロケが行われた静岡県西部地方の磐田市や掛川市の風景は美しく、天竜浜名湖鉄道の車両から手を振る別れのシーンは青春ドラマの魅力が凝縮されている。