運転手不足に悩むバス会社が仕掛けた「バズり大作戦」 待ったなしの「2024年問題」、自治体による大胆支援策も
今春には月給平均8400円、賞与年間1カ月分の賃上げを実現。働き方の多様化に向けた取り組みにも着手し、平日のみの出勤や、運転区間を限定した人員の募集を始めている。長年つきまとう不規則な勤務や、稼げないという印象を払拭したい考えだ。 若者を取り込もうとTikTok(ティックトック)のアカウントを開設し、運転手にありがちな癖や、仕事内容を発信している。多種多様なPRが功を奏し、毎月開催しているバスの運転体験会の参加者が定員いっぱいになるなど、確実に効果は出てきた。 神姫バスでは12月に運賃を26年ぶりに値上げする。上昇分は人件費などに充てる方針だ。中右次長は「良い会社にしないと人材はこない」と理解を求めた上で、「バスを止めたら困る住民がたくさんいる。『とりあえずやってみようや』の精神で続けたい」と語気を強めた。 ▽「このままではヤバい!」 京浜急行バス(横浜市)は2024年に運転手が不足するとして、今年7月に運転手募集のキャンペーンを始めた。その名も「グッドなシゴト場プロジェクト」。「車内広告ジャック」と称して京急電鉄の電車1両の広告スペースを貸し切り、宣伝の掲示で埋め尽くした。
ポスターには「もう少し給料上がりませんか?」という社員の切実な質問に社長が回答しているものもある。中でも目を引くのは「このままではヤバい」と人材不足を嘆く1枚。鬼気迫る内容に反響は大きかった。ポスター掲示後、会社説明会への参加者が倍増したという。社の担当者は「都心も運転手不足が深刻。若年層に魅力を伝えていきたい」と話す。 ▽不足は3万6千人 日本バス協会が昨年9月に実施した全国のバス会社への聞き取り調査によると、2023年度は約12万1千人の運転手が必要だが、実際は約11万1千人。1万人足りていない。2030年度には約9万3千人まで減り、3万6千人が不足する予測だ。協会の担当者は「人手不足で路線がなくなることが現実に起きている。労働条件の改善、募集活動の強化、運転手の養成など、業界として考えていく必要がある」と嘆く。 路線バスの減便や運休は全国で相次いでいる。運転手不足は廃線につながる可能性もあり、住民の生活に大きな影響を与える恐れもある。国土交通省の交通政策白書によると、2010年度~21年度までに1万5千キロ以上の路線が廃止となった。