暴力団「工藤会」の本部事務所跡地に「福祉施設」を建設 北九州市のNPOが1億円の寄付を募る
入所者には11平方メートルの一人部屋、「地域共生社会」を目指す
厚労省は救護施設について「1部屋あたりに収容できる入所者は4人まで」「部屋の床面積は入所者1人あたり3.3平方メートル以上」等の基準を設けている。 一方、「希望のまち」では入所者はすべて一人部屋に収容し、また床面積は11平方メートルにすることを予定している。 「厚労省の基準は『最低限度のことで我慢しろ』というものだ。しかし、福祉とは最低限度ではなく、『あるべき社会』の基準を示すべきものだと考えている。入所者が『生きててよかった』と思えるような施設を設計したい」(奥田牧師) また、国土交通省が発表している住生活基本計画では、単身者が「健康で文化的な生活」を送るために必要不可欠な最低居住面積の水準は25平方メートルとされている。 「この水準を考えると、11平方メートルは決して贅沢ではない」(奥田牧師) さらに、全国に先駆け「地域共生社会」のモデルを具現化するため、地域住民が自由に利用できる大ホールや子どもの学習支援センター、放課後デイサービスや地域互助会事務局などの設置を計画しているという。
物価高が原因で、総予算が10億円から15億円に上昇
当初、「希望のまち」は4階建ての建設を計画しており、総予算は10億円を見込んでいた。 しかし、2020年以降の新型コロナウイルスの流行や2022年2月に始まったロシア・ウクライナ戦争、同年4月以降の急激な円安などが原因で物価や資材が高騰。当初の設計では成立しない事態となったため3階建てに計画を変更したが、それでも総予算の見積もりは13億円に上昇した。 抱樸は金融機関から5億円の融資を受け、公益財団法人「日本財団」による「みらいの福祉施設建築プロジェクト」から5億円の助成も受ける。また、以前のクラウドファンディングや寄付などによって残りの3億円も確保したが、2024年5月、発注機関の予定価格を超えているために公共工事の落札者が決まらない「入札不落」となった。 入札不落を受け、「希望のまち」はさらなる設計変更を迫られた。 「削れるところはできるだけ削ったが、どうしても総予算は15億を上回る。 物価高騰がいつ終わるかもわからない。これ以上引き伸ばしていたら『希望のまち』を完成させることができなくなる」(奥田牧師) 着工を急ぐため、8月に金融機関から一億円を一時的に借り入れた。そして、残りの1億円について寄付を募るために、今回のクラウドファンディングの発表へと至った。 目標金額を達成した場合、11月か12月に公募入札を行う予定。落札すれば2025年1月から3月の着工、2026年度中の竣工を目指す。
著名人も「希望のまち」計画に賛同
会見には抱樸の関係者のほか、「希望のまち」計画の理念に賛同する著名人も参加した。 社会派クリエイティブを掲げる株式会社「arca(アルカ)」のCEOでニュース番組のコメンテータ―なども行う辻愛沙子氏は「実際に自分が施設を利用することがなくても、『自分がいざ大変になった時に受け入れてくれる場所と人がある』という事実が存在すること自体が、希望になる」とコメント。 また、哲学者の内田樹・神戸女学院大学名誉教授は「『希望のまち』はただの社会福祉施設ではない。日本社会に、新しい相互支援のロールモデルを作る事業だ」と語った。
弁護士JP編集部