日本の若者の「建築業界離れ」がかなり深刻に…「労働時間は長く賃金も低い」厳しい実態
労働時間は長く、賃金も低い
だが、国交省の皮算用通りにいくとは限らない。国交省の別の資料によれば、働き方がなかなか改善しない実態が浮き彫りになっている。 建設業における2021年の年間実労働時間は1978時間で全産業の1632時間と比べて346時間、率にすると21.2%も長い。1997年度と2021年とを比較すると、全産業が225時間短縮したのに対し、建設業の短縮は48時間だ。 休日状況も建設業全体で見ると36.3%が「4週4休以下」となっている。「4週8休」の週休2日となっている人は19.5%に過ぎない。 技能労働者(建設工事の直接的な作業を行う人)の賃金も低い。2019年で比較すると、全産業の男性労働者が560万9700円なのに対し、建設業の男性技能労働者は462万3900円に過ぎない。 建設業の就業者は、政府による公共事業予算の抑制方針に伴い1997年の685万人をピークに減少した。2011年以降は建設投資が拡大する中でもほぼ横ばいをたどっており2021年の就業者数は482万人でピーク時と比べて29.6%少ない。技術者(施工管理を行う人)は1997年の41万人から2021年は37万人、技能労働者は455万人から309万人へとそれぞれ減った。 受注高が減った時代に他業種に流出した人たちが戻っていないのだ。加えて、「雇用環境が劣悪」との印象が定着し、新規に就業する若者が増えないのである。就業しても辞めてしまう人も少なくない。少子化で若者の絶対数が減っている上、仕事が肉体的にきつく、体力的に長く働けないというイメージがあることも若者を遠ざける要因となっている。とりわけ不足しているのが、若い施工管理技士だ。建設現場には不可欠な存在であり、このままベテランが引退していけば建物を建てることが難しくなる。 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)