米朝会談の始まりで「アジアの冷戦」は終わるのか
南北は「統一」するか
これに加えて、ヨーロッパでの冷戦終結の象徴ともなった東西ドイツの統一と比べても、朝鮮半島の南北統一は困難とみられます。 米朝首脳会談に先立って、4月に行われた南北首脳会談で発表された「板門店宣言」では、「共同繁栄と自主統一の未来を早めていく」とうたわれています。南北統一は、北朝鮮をめぐる地域の緊張をなくす、究極の方法といえます。 しかし、そもそも体制の保証は北朝鮮が現在のまま存続することを前提としており、朝鮮半島が一つの国になることと矛盾します。そのため、南北がそれぞれの体制を維持しながら「連合国家」となる案もありますが、それでもハードルは高いとみられます。連合国家になる場合、外交政策、防衛政策などで一定の共通性は必要になりますが、アメリカの同盟国であり、G20の一国でもある韓国の外交的な立場と北朝鮮の間の整合性を図ることは困難です。 さらに、それぞれに独立した国とはいっても、共通通貨の使用をはじめ、経済面でも連携させなければ、連合にはなりません。しかし、経済政策の調整を図るためには、所得の高い側の負担が必要になります。 東西ドイツの場合、1990年当時の西ドイツの年間平均所得はユーロに換算すると1329ユーロで、これは東ドイツ(544ユーロ)の約3倍にあたりました(ドイツ社会・経済パネル)。この格差を埋めるため、西側から東側への財政支援などが行われましたが、現在でも旧東ドイツは旧西ドイツと比べて所得水準が低いままです。 これに対して、アメリカ中央情報局(CIA)によると、2015年段階の韓国の一人当たりGDP(国内総生産)は3万7500ドルで、北朝鮮の1700ドルの20倍以上にあたります。その格差に鑑みれば、統一にともなう韓国の経済的負担はドイツ統一の際の西ドイツのそれを大きく上回ります。 韓国では若い世代を中心に、北朝鮮との民族的な一体性への意識が薄くなっており、この負担を率先して引き受けることに関する国内の理解には限界があります。周辺国からの支援があったとしても、北朝鮮の経済が破たん寸前であることは、南北統一を妨げる要因になるといえるでしょう。