独身で子どもがいない叔母が危篤状態です。相続人のなかに生存しているが所在が分からない人がいるのですが、どうしたらよいですか?
戸籍の附票でも住所を特定できないことがある
しかし、戸籍の附票を入手すれば必ず住所が分かるわけではありません。 例えば、本籍地を何度も変えている場合です。戸籍の附票は、その本籍地における一連の住所を記したものですので、変わった後の本籍地が分からなければ、住所が判明しません。 また、日本以外の海外へ引っ越してしまった場合も同様です。「〇〇国」とだけ記され、具体的な海外の住所が判明しないことは少なくありません。 では、そんな場合はどうすればよいのでしょうか? 次に説明する、公的な制度の利用を検討してみましょう。
裁判所の「不在者財産管理制度」を利用する
「不在者財産管理制度」とは、家庭裁判所の監督の下で不在者の財産を管理する制度です(※2)。 この制度では、家庭裁判所は所在不明の方に代わってその方名義の財産を管理したり、一定の許可の元、遺産分割や不動産の売却などを行ったりすることができる「不在者財産管理人」を選任します。 つまり、所在不明の相続人の代わりに、不在者財産管理人が遺産分割協議に参加したり、相続手続きを進めたりすることができるようになります。 ただし、この方法にも注意点があります。例えば、この制度の対象となる「不在者」とは、次のような方とされています。 「(前略)この制度で対象となる不在者は、従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者とされ、例えば、長期の家出人や音信不通となった者で、親戚、友人等に照会して行方を捜したものの、その所在が判明しない者などが挙げられます。(後略)」 (出典:内閣府「不在者財産管理人制度」) 手は尽くしたがどうしても居場所が分からない。自力ではどうにもならない。そのようなときに、この制度を利用できるのです。
不在者が外国にいる場合は、外務省の「所在調査」を検討する
もし、所在不明者が外国にいることが分かった場合、どうやって住所を調べればよいのでしょうか。 その方法の一つとして、外務省の「所在調査」があります。これは、「海外に在留している可能性が高く、長期にわたってその所在が確認されていない日本人の連絡先等を確認する行政サービス(※3)」です。 この制度を利用すると、海外に在住する日本国籍を有する邦人の所在について、特定の国を管轄する在外公館が把握できる資料を中心に調査が行われます。もしこの手段で住所を特定することができれば、所在不明の相続人とコンタクトが取れる大きな手掛かりとなります。 一方、注意点があります。まず、所在不明の方がどの国や地域にいるのかを特定する資料が必要です。また、外務省がその国で不在者を追跡調査して探してくれるわけではありません。 この方法も、前述の裁判所「不在者財産管理制度」と同様に、あらゆる連絡可能な手段をすべて取ったうえで、それでも所在が分からない、連絡が取れない、という場合に利用できる制度といえます。