ギャンブル依存にしない予防策を 滝口直子・大谷大学教授
「家族で抱え込まず助けを求めて」
──ギャンブル依存の実態がなかなか把握されないのはなぜか。 「ギャンブル依存を恥とする意識が根強く、問題が表に出にくい。家族が問題に気付いても、当事者が死のうとしたり、犯罪に走るのではないかと不安が募る。結果的に当事者がギャンブルで作った借金を家族が肩代わりすることで、依存症が長期化してしまう」 ──依存症の人にアドバイスを。 「依存症の人はギャンブルの借金を返そうとギャンブルにのめり込み、借金を重ねるケースが多い。『借金の問題は必ず解決できる。自暴自棄になってはいけない』と助言したい」 「依存症の克服は容易ではない。ギャンブルをやめると言いながら、やめたくない。わくわく感がたまらないからだ。ギャンブル依存から抜け出すにはギャンブル以外の娯楽を見つける必要があるが、ギャンブル仲間とばかり付き合っていては見つからない。ギャンブルをしない人たちと交流することが大事だ。自助グループでは、ギャンブルをやめようとする人たちが自身の体験を語り合うことを通じて、互いに認識や行動を変えていく」 ──依存症の人と向き合う家族はどのようにしたらよいのか。 「ご家族には『自分たちだけで問題を解決しようと抱え込まないで、助けを求めてください』と、アドバイスしたい。大阪府の場合、枚方市の府立精神医療センターなどに相談すれば、適切な治療プログラムを受診できる」 「依存症を克服するには、ご家族にも変わってもらわなければいけない。当事者に対し、責めない、お説教をしない、当事者の行動を監視しないなど、発想の転換が必要になるが、自分たちだけでは難しい。だからこそ、助けを求めてほしい。同じ境遇の家族が同じ目線で経験を共有することが効果的だ。私の場合はこうしたらできたなどと意見交換をして学び合い、焦らずに当事者を支えていく。依存症から回復した人もたくさんいる」 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑) ■滝口直子(たきぐち・なおこ)1955年生まれ、カリフォルニア大学(UCLA)民俗・神話学際プログラム博士課程修了。別府大学講師などを経て現職。ギャンブル、アルコール、薬物などの依存症問題を研究。ギャンブル依存に苦しむ当事者と家族への支援や、「家族教室」などの回復の場づくり、予防教育などに取り組む。