会場も騒然となったジャッジに京都の曺貴裁監督は何を感じたか。川崎との一戦は見応え十分な内容に
ドロー決着も互いの特長が表われる
[J1第36節]京都 1-1 川崎/11月9日/サンガスタジアム by KYOCERA 【動画】川崎戦での京都のゴール J1の36節として京都がホームで川崎と対戦した一戦は、1-1のドローで幕を閉じたが、ハイテンポな展開で互いの特長が表われたゲームと言えた。 京都の曺貴裁監督も一定の評価を口にする。 「佳境の季節になってきたなかで川崎さんという素晴らしい相手をサンガスタジアムに迎えて、間違いなく川崎さんも勝点3を狙った試合で、我々も点を取られたあとも含めて引き分けだったなかで、当初J1に上がった時も川崎さんにチャレンジして、あのチームに勝つっていうことを選手に伝えて、早3年になりますけど、お互いにお互いのスタイルが出た見どころのある試合だったと思います。 欲を言えば勝点3を取りたかったですが、最初に失点して、運もあったPKで、それも最初に止められたのをもう1回やり直して、取れたっていうところも含めて、自分たちにとっては悪くない勝点1だったと思います。 今日のミーティングで一意専心という言葉を使って、やはり我々がここで広島さんに大敗したあと、ともすれば、やるサッカーを変えたり、逆に違うことを僕らがやったとしたら、もっといい結果が生まれたかもしれないすけど、僕自身はそう思っていなくて、やはり前期勝点をなくしたことで、改めて自分たちのサッカーに向き合えたし、その時間をスタッフらと全力で取り組んだことで今日の勝点も生まれたと思います。選手たちもよく頑張ってくれたと感じます」 勝ち切れなかったが多くのチャンスを作り、守備でも身体を張った姿にサポーターも熱くなったのではないか。指揮官はこうも続けた。 「チャンピオンズリーグがやっている時期で、全部の試合は見られていないですが、例えばリバプールやバルセロナの試合を見ていても、一方的にリバプールがやりたいことをやってシュートチャンスで終わる試合はなく、リバプールの穴を突いて相手が攻撃するシーンも見られるので、何に感銘を受けるかというと、お互いのチームがお互いのサポーターの前で、自分たちのサッカーを見せていく、ぶつかり合う試合だと思います。 その意味では、川崎さんの良さを消すという戦い方で、自分たちの色が薄まってしまうのはサンガらしくないと思いますし、勝たないとらしさって必要はないと言われるかもしれませんが、やはり誰が見てもそうだなという、らしさは僕は必要だと思います。もちろん1-0にされた場面など、反省すべきところはありますが、自分たちのそういうものは相手の脅威になりえたと思うので、そういう意味の勝点1だと感じています」 一方で前半終了間際にはラファエル・エリアスがカウンターから持ち込み、相手ゴール前でDFと交錯したように見えたシーンや、試合終了間際に豊川雄太が相手ペナルティエリアに入ろうとしたところで倒されたように見えたシーンでは笛は鳴らず。京都ベンチが笠原寛貴主審に抗議する場面もあった。 対して、指揮官の言葉通り、同点ゴールはVAR判定で相手のハンドによるPKが認められ、一度はセーブされるも、川崎GKチョン・ソンリョンがキック前にゴールラインより前に出たということで蹴り直しで生まれたものだった。 そのあたりのジャッジに関する受け止めを指揮官に質問すれば、冷静な答が戻ってくる。 「今は世界的にもVARがあるなかで、VARが入って(相手の)ハンドを取っていただいたっていうのは、ハンド、ハンドじゃないかっていう議論は別にして、VARのシステムがあってこそ。 そういう意味では1、2個、自分たちがそういうプレーだったかなと値するものがあって、そこでVARシステムが介入しないで、そのままレフェリーの判断を尊重しますってことは、VARで見ててもファウルとは言えないよって判断をされたって思います。 実際に起きている現場の選手間の温度と、そのファウルかファウルじゃないかっていうのは、今日の試合は笠原さんが正当に笛を吹かれたと感じますが、ちょっと見てるシーンと判断のところに選手からしたら、お互いのベンチからしたら、っていうのは、多少あったのかなと。 ただそれはスペインでもドイツでもイングランドでもあることだと思うんで、それが、駄目だったって言うつもりは全くなくて、そういう風にVARが入るところ、逆にVARが入らないでそのままレフェリーの判断を尊重するところっていうのは、僕自身なんとなくやっと慣れたところがあるので、ファウルだろって思ったシーンもありますけど、現場で見たことが尊重されるってことであれば、欲言えば全部ファウルを取ってほしいですけど、そんなことはないんで。別に変な判定じゃなかったかなと思います」 試合後、曺貴裁監督はゴール裏でサポーターたちと何やら会話をかわしていたが、「大事なことを話したのですが、まだちょっと結論が出ていないことなので、来週にさせてください」と語るにとどめた。 もっともジャッジも注目された一戦は、改めて見応えのある内容であった。そして両チームは試合後に他会場で磐田が敗れたことで、残留も決めている。 取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)