「5年後にこの熱量のファンレターがもらえるかなって…」“バズが寂しい”マンガ家が『死ぬまでバズってろ!!』を描いたワケ
フリーターのタパ子が告発系インフルエンサーとなり、ネットでバズりまくって底辺から這い上がる様子を描いた漫画『死ぬまでバズってろ!! 』。フリーアナウンサーのひき逃げ事件の動画を撮影したタパ子は、SNSの話題をさらうが、ある日、そのフリーアナウンサーの娘がバイト先にやってきて――。 【マンガ『死ぬまでバズってろ!!』】底辺フリーター26歳がひき逃げを目撃告発系インフルエンサーの頂点を目指す 芸能界ゴシップを狙うタパ子と、タパ子によって地位を脅かされた人たちの緊迫したやりとりに目が離せない一作です。9月25日の第1巻発売を記念して、同作を執筆した経緯や、漫画のために行った取材について著者のふせでぃさんに聞きました。
自身のバズ経験が制作のきっかけに
――漫画『死ぬまでバズってろ!! 』の構想のきっかけを教えてください。 ふせでぃ 自分もネットで注目された経験があったので、その時の感情をエンタメとして物語に落とし込めないかなと考えたのがきっかけです。 ――ふせでぃさん自身は、Instagramにアップしたイラストが話題となり、イラストレーター、そして漫画家として多くの著書を出すようになったんですよね。 ふせでぃ 6年前に初めて本を出した頃は、ネット上の小さな世界で人気が出る実感がありました。その頃は、「発信を続けていれば、誰かが見つけてくれるんだ」と思ったんです。今作では自分の話をそのまま描くわけじゃないけど、その時の感覚をうまく取り入れています。
数字を追い続けると、何を創作したいのかわからなくなって
――タイトルに込めた思いは? ふせでぃ ストーリーとキャラクターがぶれないように決めました。主人公がバズを追い求めて、最後まで走り抜けるストーリーです。 でも私自身は「バズ」に飽きているというか、少し疲れていて。昔から「今、バズっているイラストレーター」と紹介されることが多かったんですけど、「人気は今だけってこと?」ってポジティブに受け止められなかったんですよね。 私はずっと同じテンションで絵を描いているだけなのに、話題になったらそういう紹介をされることに違和感があって。当時はたくさんのファンレターをいただけて本当にうれしかったですけど、「5年後には、こんな熱量のファンレターをもらうことはないんだろうな」って勝手に想像して、寂しさもありました。 ――それがバズに対する疲れに繋がったんですか? ふせでぃ そうかもしれません。「いいね」とかの数字を気にすると、昨日よりいい数字を追いかけちゃって、どうして創作しているのかわからなくなるときがあるんです。それでSNSから距離を置いた時期もありました。今作の単行本が発売されるのを機に再開しましたけど、SNSの更新頻度が下がると、やっぱり数字ってあまり伸びないんですよね。そうすると「私の作品には、ファンがいないのかな」ってネガティブになっちゃう。でも創作って本来はファンがいてもいなくてもすることなのかなと思ってもいて。 それに「いいね」が伸びている絵が「いい」とされるのも変で、本当は作家自身がいいと思える絵を描かないといけない。先日、生成AIが描いた絵に20万ふぁぼがついていましたけど、「それは本当にいい絵なのか」という問題と似ている気がします。 ――生成AIに関してはどのように考えているんですか? ふせでぃ きれいな絵はAIが描いてくれるから、私にできることって、逆に変な絵というか、誰にも真似できない絵を目指すことなのかなと思っています。自分にしかできないものじゃないと商品価値が付かない。ある意味、「絵は下手なままでもいいのかもしれない」とすら思います。 漫画の視点から見ても、『鬼滅の刃』は人気作品ですけれど、バズというよりはもはや殿堂入りの作品ですよね。私は「描く」という行為が好きで、その結果が本になるわけですが、そういう風にバズとは関係なく読まれる作品を作っていければ嬉しいです。