中山秀征『THE 夜もヒッパレ』に見たプロの仕事術 安室奈美恵らと作り上げた「妥協なき華やかさ」
スタジオの中に、それも、映らないところにBarを作ってバニーガールまで配置するなんて、まだバブルの残り香があった時代だからこそできた芸当で、今なら「制作費の無駄遣い」と一蹴されるかもしれません。 ただ、これも“憧れの華やかな世界”にこだわったからこそのポジティブな無駄で、現場の意思統一や、活気を生み出す効果があったのも事実です。 いまや、テレビを取り巻く環境は大きく変わりました。 でも、魅力的なコンテンツは“憧れ”を感じる現場から生まれるというのは、時代に左右されないエンターテインメントの原則なのではないかと、僕なりに最近考えたりするのです。
■大物になると予感させたアーティスト 『THE夜もヒッパレ』からは、MAX、知念里奈さん、SPEEDといった沖縄アクターズスクール出身の新人たちが、次々とスターになっていきました。 中でも、番組初期にブレイクし、一気に時代の頂点へ駆け上がったのが、安室奈美恵さんです。 「秀ちゃんの注目ボード」というコーナーを一緒に担当していたこともあり、「あの安室ちゃんの新人時代って、どんな感じだったの?」と聞かれることも多いのですが、もう、最初から「別格」でした。
はじめてSUPER MONKEYʼSのパフォーマンスを見たときは「衝撃」の一言。まだ大ヒット曲こそありませんでしたが、歌もダンスもあの時代では群を抜くクオリティでした。 特にセンターの安室さんを見た共演者・スタッフの多くが「とんでもない大物になる」と“確信に近い予感”を興奮気味に語っていたのを覚えています。 ■安室奈美恵さんの天才的な「間」 実は彼女は「トークの天才」でもありました。といっても「しゃべりで笑いを取ってやろう」なんて野心は1ミリも持っていません。彼女の“何気ない一言”になぜか笑ってしまうのです。
たとえば「安室ちゃん、今日は何で来たの?」と聞くと「電車!」と返してくる。文字にするとなんてことはないこのやり取りも、彼女の“間”が抜群だから思わず笑ってしまいます。 しかも最後に、「ヒデちゃ~ん、東京の地下鉄って複雑すぎてわかんないよ~」なんて一言を加えるだけで、その言葉が、なぜか立派なオチになってしまうのです。 しゃべりの“間”が面白いのは、ミュージシャン特有のスキルなのかもしれません。ただ彼女は、その“間”が「天才的なレベル」でした。