「驚きでした、こんな大勢のクリエイターが活動しているとは」。注目の川崎・南武線エリア「武蔵新城」に登場する「シェアアトリエ」
土地として買うはずだったが、行ってみたらあまりにも「エモい物件」が建っていた
「千年共店」は「千年新町」という住所に立地します。地元の人は「ちとせしんまち」と呼びますが、表記上は「しんちょう」。千年という町がもともとあり、その新町というエリアです。 「建築家つながりで、廣瀬さんが武蔵新城で町工場だった建物を再活用し、シェアアトリエを共同運営しているのは知っていました。いちど見せていただいて、いい仕組みだな、こういう活用法もあるんだなと感心しました。そこへ、土地情報として、同じく武蔵新城の物件を買いませんかと声がかかり。見に行ってみたところ、小さいけれどしっかりした築30年ほどの鉄筋コンクリート造の上物がまだ残っていました」(佐藤さん) こう振り返る佐藤さん。もったいない、これを壊すにもコストがかかるし、SDGs的な観点から見てもまだ使える建物なのにどうなのか。ただし、シェアハウスは社の事業としては運用が難しい、シェアオフィスが成立する立地でもない。「もしかして、これもシェアアトリエ適地なのかな?」と、廣瀬さんに相談を持ち掛けました。 「佐藤さんに誘われて、私も一緒に見学に行きました。確かに建物がしっかりしているうえ、とても面白いつくりです。建ち姿がよいと言いますか、もとは社員寮ですが、寮なのになんと建物の中に100平米の住宅が2戸しかない。敷地に対して建物が小さく、余白があるのも魅力です。通常ならば壊して更地にして、いっぱいまで建ててしまいますが、こんなに不思議な魂の宿った建物を壊して何の変哲もない戸建てにするのももったいない話だなと」(廣瀬さん) 佐藤さんが社に新規事業として提案、物件を取得し、正式に廣瀬さんに企画を依頼したのは、7月の内覧からわずか2か月後の23年9月でした。佐藤さんの会社は利回りを慎重に計算する不動産投資ディベロッパーですから、普通ならばこんな剰余変数しかないような物件を買うという選択肢があり得ないそう。 「この仕事を長く続けていると、このように出会うべくして出会う物件というものが登場するんです。みんなが吸い寄せられるようにして巻き込まれていく『力がある物件』です。今回は、同じ武蔵新城駅での廣瀬さんのご実績と、新しい不動産の価値創造という社の観点がマッチし、社内で賛同を得ることができました。やはりこの物件の不思議な魅力、力がに導かれたのかもしれません。社として初のトライですので迷いもありましたが、これもご縁なので、信じて挑戦してみようと決心しました」(佐藤さん) この記事では2人が物件に出会うまでの経緯をお話いただきました。続く後編記事ではシェアアトリエとはどのような事業なのか、その運営について伺います。
オトナサローネ編集部 井一美穂