元世界ヘビー級王者がボクシング・中谷潤人を絶賛…「世界チャンピオンの中でも数少ない領域」と語るワケ
世界チャンピオンの中でも数少ない領域に達している
そして元世界ヘビー級チャンプは、私に質問した。 「5ラウンドに挑戦者が、足を滑らせたよな。キャンバスは、足を取られやすかったのか。お前はどう見た？」 ウィザスプーンが指摘した通り、10月13、14日と有明アリーナでは7つの世界戦が組まれたが、足を滑らせる選手が多かった。大トリを務めた中谷自身にもそれは伝わっており、「だから、あまりコーナーには行かず、リング中央で戦うことを心掛けました」と振り返った。WBCバンタム級チャンプの言葉を元世界ヘビー級王者に告げると、彼は声のトーンを上げた。 「流石にクレバーだな。それだけリングを思いの儘に支配していたってことさ。相手がいて、パンチを交換し合うのに、リングのこの辺で戦おう、あちらは使わないようにしようなんて、余程実力差がなければ出来やしないよ。少なくとも、俺は意識したことがないぜ」 ウィザスプーンはそう話すと、豪快に笑った。 「いいなぁ。本当に可能性のある若者ならではのセリフで、楽しくなる。ジュントは世界チャンピオンの中でも、数少ない“アーティスト”の領域に達している選手だ」 その中谷自身は今回、「インファイトをしなければノックアウトできなかったと思いますが、接近戦を挑んだため、何発か被弾しました。今後の課題の一つはインサイドでのディフェンスです」と語っている。 「そうかな？ 今回俺が、接近戦でのジュントにヒヤッとしたシーンは無かったよ。5ラウンドに右フックをもらったが、重くはなかっただろう。むしろ、巧みにブロックしていたし、再三繰り出した顎への右アッパーで、相手がダメージを蓄積していった。終始、ジュントの動きはシャープだった。 俺はジュントがディフェンスを課題に挙げたところが嬉しいね。何度でも言うが、ボクシングは打たせちゃダメだ。選手寿命にも関わるし、引退後に後遺症に泣かされ、ボロボロになっている元ファイターの姿を嫌というほど目にしている。一流選手になれるか否かは、ディフェンス力だと明言出来る。ボクシンググローブを嵌める人間は誰だって闘争本能を持ち合わせているから、ある程度の攻撃は身に付くんだよ」
