映画「あぶない刑事」“前期高齢者”が大活躍の背景 なぜドラマや映画で中年・シニアの主人公が増えているのか
「貫禄のあるボスが指示し、若手が行動」という図式も逆になってきている。いまや“あぶない”ことをするのは年上で、制御するのが若くして権力を持った年下なのだ。 『帰ってきた あぶない刑事』でも、自分の地位を活用し、2人をバックアップするのは、彼らの後輩で、現在は横浜港署の3代目捜査課長になっている町田(仲村トオル)だ。 ■コンプライアンスを乗り越えるための“妙案” コンプラを気にせずコンテンツを作るには、それが緩かった時代のブームや当時のコンテンツを活用して、当時を生きた世代を主人公にし、「時代のせい」にするのがいちばん、という事情もあるのだろう。
そうすれば、オリジナルを知っている世代は懐かしみ、後の世代はツッコみながら、現代では成立NGなやり方にドラマとロマンを感じることができる。ノスタルジーというオブラートもあり、視聴者に前向きに届く。 そういった意味で、リバイバル作品は制作側、視聴者側両方のニーズを叶える、今後の重要なコンテンツといえる。『あぶない刑事』の舘・柴田コンビ、『GTO』の反町のように、主役を演じた俳優がカッコいい年の取り方をしている作品はなおさらだ。人生100年時代、「こんなふうになりたい」という目標となる。
今秋には、人気シリーズ『踊る大捜査線』の12年ぶりの新作も公開予定だという。主人公は、柳葉敏郎演じる室井慎次。あの岩のような信念を持つ「室井さん」が、この時代にどう風穴を空けるのだろう。柳葉の熱演が楽しみである。 5月3日、『帰ってきた あぶない刑事』の完成披露イベントとして「ザよこはまパレード(国際仮装行列)」が開催された際、こんなことがあった。 ハイヒールを履いて足が痛くなってしまった浅野温子を、舘ひろしがひょいとお姫様抱っこしたのである。私も動画を見たが、あまりのさりげなさに唸ってしまった。「気障(キザ)」を刷り込まれた昭和の大スター特有のテクニック。シニアだからこそ許される“粋”があった。