映画「あぶない刑事」“前期高齢者”が大活躍の背景 なぜドラマや映画で中年・シニアの主人公が増えているのか
スマートフォンやTikTokなど、ジェネレーションギャップを感じるアイテムも登場するが、さほどそこに重きを置いていない。令和という時代に合わせアップロードするというより、年を取ったことを認めつつ、若者と比べず、自分たちが持つ「衰えない才能、個性」を前に出し、タカとユージはお茶目に走り回っていた。 非常にニュートラルな目線で、2人がいい年の取り方をしていることに感動できたのである。 ■バイクを乗り回す“前期高齢者”
しかし改めて驚く。舘ひろしは1950年3月生まれの74歳、柴田恭兵が1951年8月生まれの72歳。どちらも芸能界デビューは1975年。来年で芸能活動50周年である。 いわゆる“前期高齢者”。そんな彼らがバイクを乗り回し、子ども世代どころか、孫世代とともに走り回るのだ。どんなポーズも粋で色気があり、「こんなふうになれるなら」と70歳になることに希望まで感じてしまう。 昭和・平成・令和とコンプリートし、公開前から話題沸騰。『あぶない刑事』はなぜここまで熱く注目を浴び続けるのだろう。
ドラマ放送開始は1986年。「キザな台詞、イカしたジョーク、スタイリッシュなセンス」――。もはや刑事ドラマとは思えない言葉が並んだこのキャッチフレーズの通り、『あぶない刑事』はバブルの空気を反映した、オシャレで粋がテーマという前代未聞のトレンディ刑事ドラマとして大人気を博したのである。 当時ユージ役の柴田恭兵35歳、タカ役の舘ひろしは36歳であった。『太陽にほえろ!』で石原裕次郎がボスをしていたのが38歳だったことを考えると、若手どころか、かなりの中堅。タカとユージは初回からすでに血の気が多い若手ではなく、力の抜き加減を知っている、憧れの大人だったのだ。
回を追うごとにチャラく派手になっていくタカとユージ、そして浅野温子演じる薫。ブランドのスーツを着こなし、犯人を追い、「OKベイビー?」「夜遊びはおねしょのもとだぜ、坊やたち」など、セリフもどんどんキザになっていった。 さらに、聞くだけでテンションが上がるオープニングは、タカ役の舘ひろしが作曲しているというのも驚く。 挿入歌のエキサイティングな『RUNNING SHOT』も、疾走感の中にどこか昭和歌謡みがある絶妙な名曲。「行くぜ!」と視聴者を煽ってくる。