女性の歌声に希望を見いだした1990年代、進化続ける「Get Wild」 40周年、Jポップのレジェンド小室哲哉さんが語る〝新しい音〟とは
1990年代、街の至る所で小室哲哉さんの音楽が流れていた。TRF、華原朋美さん、globe、安室奈美恵さん…。小室さんプロデュースの音楽はまさに時代のBGMだった。 【写真】韓国のBTSが世界的スターになれた秘話 「僕が見ていた世界は地獄のようでした」
そんな小室サウンドに再び注目が集まっている。ネットフリックスの映画「シティーハンター」ではTM NETWORKの代表曲の最新版「Get Wild Continual」が響き渡り、TMのデビュー40周年の全国ツアーも好評のうちに幕を下ろした。少数精鋭のオーケストラで小室さんの楽曲を演奏する公演「billboard classics ELECTRO」も6月29日から9月まで歌手の野宮真貴さんらをゲストに迎えて全国で開かれ、その合間には五輪で沸くパリでの公演も控える。Jポップのレジェンドはなぜ今も走り続けるのか。過密スケジュールをこなす小室さんに、東京都内のスタジオでインタビューした。(共同通信=森原龍介) ▽現在進行形のアーティスト 6月初旬、東京・六本木の「ビルボードライブ東京」でコンサートが開かれた。ステージにはシンセサイザーに囲まれた小室さんとチェリストの徳澤青弦さんの2人。この会場を「実験室のよう」と語る小室さんは「ELECTROに向けての準備をしてまして…」と語り、複数台のシンセサイザーを慌ただしく操りながら、globeの「Many Classic Moments」やTMの「Get Wild」などを披露、電子音とチェロの音の重なり具合を確かめるように演奏を続けた。
本番ではここに約20人のオーケストラが加わる。「生の楽器に置き換わると、オーケストラの人たちのそれぞれの個性があって、譜面では計り知れない〝波〟みたいなものが生まれる。それを瞬時に把握してアレンジを足していかないといけない」。誰もが知る楽曲をオーケストラでただ豪華に再現するというわけではない。常に最前線で新しい表現に挑むアーティストの現在進行形がそこにある。 ▽全ては「リフ」から 小室さんがこれまで作ってきたのは、リズムと音の反復がうねりを生むダンスミュージック。それはクラシック音楽から遠いものではないと小室さんは言う。「例えば『ボレロ』でも、反復する旋律が徐々にグラデーションのように変わっていく。ダンスミュージックにちょっと似てますよね」。生演奏のオーケストラでは、集団で一斉に演奏することによる視覚的なダイナミズムも生まれる。「弦のボーイング(弓を弦に当てる動作)もそろっていたら気持ちいいし、さあ今から音が出ますよというのが視覚的にも分かりやすい」