映画「あぶない刑事」“前期高齢者”が大活躍の背景 なぜドラマや映画で中年・シニアの主人公が増えているのか
そしてドラマが終われば、舘ひろしによるダンディの極みのようなエンディング『冷たい太陽』が「アイラヴュウ……」と心を撫でる。まさに隙の無いダンディ&セクシー包囲網。 当時人気を博していたアメリカのドラマ『特捜刑事マイアミ・バイス』を意識し、それまでの刑事ドラマに漂っていた暗さ、悲壮感は排除することを狙ったというが、見事狙い通り。平均視聴率は20%を超え、舞台となる横浜にまで特別な輝きを持たせたのである。
1986年から2024年、つまり彼らは30代から70代にかけて、憧れで居続けているのだ。足腰は丈夫で姿勢もシュッとしたまま、白髪やシワをアクセサリーに、ダンディかつセクシーに年を取る。書くのは簡単だが、実現するのは気が遠くなるほど大変だろう。 しかも2人とも、同じくらいダンディ&セクシー。2人が並んだシーンのバランスの良さを見ると、このバディは、奇跡と言っていいのかもしれないと思う。 ■“不適切”なおじさんたちが大活躍
『帰ってきた あぶない刑事』のすごさは、シニアのタカとユージが司令塔に回らず、“現役”であるところだ。ヒーローは、若者ではなく“おじさん”。昨年あたりから、エンタメ作品でこのパターンが増えている。 今年の作品でも、おじさんが大活躍だ。ドラマ『不適切にもほどがある!』の小川市郎(阿部サダヲ)、スペシャルドラマ『GTOリバイバル』の鬼塚英吉(反町隆史)、そしてNetflixで世界的な人気を誇っている『シティーハンター』の冴羽獠(鈴木亮平)。鈴木亮平は前2人と比べると若めではあるが、原作は1980年代に連載された漫画だ。
彼らの共通点は、そのものずばり、“不適切”。炎上やSNSの批判を気にしない、セクハラ上等、エロスに積極的、言いたいことをはっきり言い、問題を解決するためならときにモノを破壊するのも平気。そんなやりたい放題の機動力が大きな武器となり、問題が収束していくのである。 コンプライアンス(コンプラ)でガチガチになり、言いたいことも言えない現代において、50代以上が持つ、さもすれば嫌われる性質でもある「遠慮のなさ、デリカシーのなさ」や「強引な行動」が、パワーの使い道によっては、閉塞感の風穴を空けるリーサル・ウェポンとなるのかもしれない、と考えさせられる。