ブレイク前に「夜のヒットスタジオ」で…TUBE春畑道哉と角野秀行が振り返る“洗礼” 90年代に歌謡曲に目覚めたエピソードも
ベストアルバム未収録の「夏が来る!」が21世紀のTUBE楽曲で最大のヒットに
TUBEの上位曲は、ストリーミングの解禁が段階的だったこともあり、’15年にリリースされた前出のオールタイムベスト収録曲(ランキング表中の「ATB区分」で「T」「U」「B」「E」と記された楽曲)を中心に人気曲が並んでいる。その中で、第11位にはベスト盤に未収録のシングル「夏が来る!」(’18年)がランクイン。本作は、21世紀のTUBE楽曲ではダントツの人気で、Spotifyだけでも200万回再生を超えている。確かに、サビの「君の笑顔 晴れるYa~」という歌詞や穏やかな曲調は、聴いているだけで心がほぐれてきそうなピースフルな作品だが、夏の灼熱をイメージした楽曲にヒットが多いTUBEとは、かなり印象が異なる。 角野「これは、大黒摩季さんの『夏が来る』と区別するためにタイトルを『夏が来る!』にしたんですよ。一応、ご本人にも確認を取りました。ライブではそんなにやっていないんだけど、上位にいるということは……もしかして、摩季ちゃんと間違えて再生している人が多いとか? (笑)」 確かに、ブレイク前のアーティストが、大ヒット曲と同タイトルやそのカバーを発表して再生数を伸ばすケースは見られるが、TUBEのような有名アーティストではちょっと考えにくいので、これは純粋に楽曲の人気だろう。 春畑「最近の作品もこんなに聴いてくれるなんて嬉しいですね。この曲は『クノール』朝のカップスープのCMタイアップが決まっていたので、あまりギラギラせず、初夏の爽やかな感じにしたんですよ」 角野「今って、何がヒットのきっかけになるか分からないですよね。以前、高校生のファンの方とお話しさせてもらった時、『Tシャツとブルージーンズ』というアルバム曲(’94年の『終わらない夏』収録)が大好きとおっしゃっていて。理由を尋ねたら、“YouTubeでたまたま見かけて曲が良いと思った”って教えてくれました。また、先日、松原みきさんを久々に聴こうと思ったら、今や世界中でヒットしているとのことで、周りのみんなが知っていて驚きました」 TUBEは海や青空など青系統のジャケットが多いので、今後、すでに海外で大ヒットとなっている大滝詠一や杏里の作品と併せて聴くリスナーも増えるのだろうか。そう考えると、なんだかワクワクしてくる。 最後に、やや余談になるが、デビュー30周年(’15年)の時のエピソードを話してもらった。 角野「あの年の4月1日、池袋駅の『東武』と『西武』との間に『中武(チューブ)デパート』を作って(笑)、僕らはその店長や各部署の部長になりきり、いろんな関連グッズを販売したんですよ」 遊び心あふれたプロモーションにメンバー自らも取り組むなんて、ゴールデンボンバーやヤバイTシャツ屋さんなど平成にブレイクしたバンドならまだしも、今や大御所感のあるアーティストではかなり異例だろう。しかし、こういった遊び心を制作や宣伝、ライブでもノリノリで発揮することこそ、実はTUBEらしさかもしれない(ちなみに、ファンクラブ限定のライブでは、サザンオールスターズはもちろん、矢沢永吉やゆず、あいみょんまでカバーするらしい)。 最終回となる【次回】は、実はファンの多いバラード作品や、近年の活動について語ってもらおう。